MRI Research Associates
社会解析ソリューション部
PROJECT STORY
国の防災方針を現場で機能させるために、
南海トラフ巨大地震をシミュレーションせよ
国が描く防災の考え方や被害の見通しは、
自治体の計画や体制へと落とし込まれてはじめて、現場で機能する。
社会解析ソリューション部の4名は、国の検討から自治体での具体化まで、
異なる立場で一連のプロジェクトに関わってきた。
構想を描き、地域に浸透させる。その過程を、4人の言葉でたどる。
清水 真幸

社会解析ソリューション部
防災・レジリエンスチーム 研究員
2024年中途入社
理工学部 建築・都市環境学専攻 修了

前職から防災関連業務に携わっており、防災事業の上流に関わりたいとの思いからMRAへキャリア入社。災害大国・日本で防災に資する事業に取り組めることを誇りに感じている。最近は猫を飼い始め、在宅勤務制度のありがたさを実感している。

Masayuki Shimizu
山内 勇人

社会解析ソリューション部
防災・レジリエンスチーム 研究員
2025年入社
医工農学総合教育部工学専攻 土木環境工学コース 修了

大学・大学院を通じて防災分野の研究に取り組み、防災分野で社会に貢献したいと考えMRAに入社。新卒1年目から多様な業務を経験し、実務の中で学びを深めている。上京して2年目、まずは東京スカイツリーに登ることを密かな目標にしている。

Hayato Yamauchi
古屋 花

社会解析ソリューション部
防災・レジリエンスチーム 研究員
2017年入社
畜産学研究科畜産衛生学専攻 博士前期課程 修了

大学院を修了後、MRAに入社。専門性を活かしつつ、社会課題に向き合う幅広い業務に携わってきた。チームの中堅として、後進のサポートにも尽力。異なる分野の知見をつなぎ、実務に落とし込むことを大切にしている。自分では、小さな変化があるほうが性に合うと思っている。

Hana Furuya
藤田 幸久

社会解析ソリューション部
先進技術・複合科学チーム 研究員
2025年中途入社
商学部・商業貿易専攻 修了

鉄道関連会社や地方公共団体での勤務を経て、より俯瞰的に社会課題、とりわけ保健・医療・福祉の防災分野に関わりたいとMRAへキャリア入社。行政・インフラ分野で培った経験を、分野横断的な研究に活かしている。趣味はお笑い鑑賞で、劇場にもたびたび足を運んでいる。

Takahisa Fujita

01
プロジェクトの背景

防災の「前提」を描くところから、すべては動き出す

大規模災害への備えは、場当たり的な対応では成り立たない。被害の見通しをしっかりと共有し、社会全体が同じ前提のもとで備えることが必要になる。

清水
「南海トラフ地震の被害想定は、おおよそ10年程度のスパンで見直しが行われています。前回の、当社も携わったその被害想定の公表から約10年が経過し、社会状況やインフラの整備状況も変わってきました。その社会情勢等の変化を踏まえ、南海トラフ巨大地震が発生した際の被害の規模や様相を出来るだけリアルに、改めて描いていく必要がありました」

そうした背景を受けて、今回あらためて内閣府よりMRAへ、南海トラフ巨大地震の防災における分析業務が発注された。

清水
「弊社としては、過去の被害想定業務で培ってきた知見があります。一方で、当時とは社会の状況が変化している点も多く、昨今の状況を踏まえて、基礎データの調査から被害想定手法の検討、結果の算出を改めて行う必要がありました。ここで導き出した結果が、その後の国や自治体の防災全体の考え方の土台になります。個人的に防衛の分野に関心があり、最悪の事態を想定するという考え方に自然と慣れてきました。防災の仕事でも、前提をあいまいにせず、一つずつ確認していく姿勢は共通していると感じています」
山内
「清水さんたちが整理した被害想定を受けて、次に必要になるのが、実際に災害が起こってしまった時の対応計画です。被害想定の結果を基に、被災地支援のために使用するルートや拠点などの検討を行います。実態に沿った計画を策定するためには、被害想定で算出された数字の意味を理解することに加えて、より具体的に地域の実態を踏まえる必要があります。被害想定の結果を、実際に運用される計画として翻訳する。その橋渡しを担っている感覚です」
藤田
「私は、精神科医療や心のケアの分野での、自治体の対応力の強化に携わっています。対応力の強化には、被害想定を踏まえて策定される自治体の計画に基づき、実災害を想定して訓練を繰り返し行うことが重要です。また、災害時の限りある資源を効果的に活用するためには、保健・医療・福祉分野の多様な支援機関が連携して活動を行う必要があります。そのため、訓練では分野横断的な連携を意識して取り組んでいます」
古屋
「私はこれまで、防災に限らずさまざまな分野のプロジェクトを経験してきました。今も、テーマが変わるたびに前提も課題も全く違う、ということを肌で感じています。自分の性格は、良くも悪くも新しいテーマに目が向きやすいと思っています。だからこそ、テーマや地域が変わるたびに前提や課題を捉え直し、そこで得た知見や進め方を整理して次の現場に渡していく。そんな関わり方が自分には合っていると感じています」

02
MRAの取り組み

構想を計画に落とし、人が動ける形にする

防災の前提が整理された後に求められるのは、それを実際に使える形へ変えていくことだ。MRAの役割は、構想と現場の間を行き来しながら、その橋渡しを担うことにある。

清水
「国で整理した被害想定の結果は、その後も使われ続けるものです。だからこそ、国側の検討だけでなく、自治体の検討にも引き続き関与し、現場でどう使われているかを考えていくことが大切だと思っています。ですので、『前提をつくって終わり』ではありません。計画や対策に落とし込まれていくところまで見届けてこそ、初めて社会に貢献したと言えると考えています」
山内
「私が担当したのは、被害想定をもとに具体的な災害対応の計画を組み立てる作業です。GIS(地理情報システム)を使って、災害時に物資や人を運ぶにあたり、到達が難しい地域を分析しました。分析そのものだけでなく、その結果をどう説明し、どう資料に落とし込むかも重要です。計画として使われる以上、分析結果を正確に伝える必要があります。GISによる分析は学生時代の研究の延長線上でもあり、これまでの経験を活かせる環境に自分の強みを発揮できていると感じています」
藤田
「精神医療分野の訓練では、県外の自治体や医療機関の方々にも協力いただきながら訓練を行います。災害が起きてから顔の見える関係を作るのではなく、平時から共通の課題認識を持って取り組むことを意識しています。今後は、精神医療分野だけでなく、原子力災害を想定した住民への心のケア支援など弊社の持つ他分野のノウハウとも接続しながら、課題解決に取り組みたいと考えています」
古屋
「このプロジェクトには、異分野の業務経験で培ってきた観察と仮説の癖も生きていると思います。個々の案件は違っても、共通する考え方や進め方はあります。それを整理し、再利用できる形にすること。いわば、分野横断の橋渡しをすることが自分の役割だと思っています」

03
プロジェクトの成果/今後の展望

前提を更新し続け、防災を社会に根づかせる

防災は、一度仕組みを作れば終わりではない。社会や環境の変化に合わせて、考え方や体制を更新し続ける必要がある。

清水
「国の被害想定が公表されると、それを起点として、各自治体の検討が連鎖的に進んでいきます。自分たちの仕事が次の議論につながっていく流れを実感できるのは、この仕事ならではだと思います。これからも国と地域の間に立ちながら、前提が現場で機能するところまで伴走し、実際の対策として機能するところまで関わっていきたいです」
山内
「プロジェクトはまだ続いていますが、分析結果が国の計画や判断に使われることに、またそれらを通じて、万が一災害が発生した際の被害軽減に少しでも貢献できることに、責任の重さを感じつつも、やりがいをもって取り組んでいます。数字で社会を支える実感を持てるのは、この仕事の魅力だと思います」
藤田
「災害時の心のケア対応は、今後ますます重要になります。災害対応に携わる人材育成や分野横断的な連携体制の整備を通じて、支援が円滑に動く仕組みを作っていきたいです。制度だけでなく、人が迷わず動ける状態を整えること。それが、防災を現場で機能させることだと考えています」
古屋
「防災は、ひとつの専門性だけで完結する仕事ではありません。さまざまな分野や立場の人が関わり合いながら進んでいきます。私自身、これまで複数の分野の業務を経験することができ、その度に新しい課題と向き合ってきました。そのおかげで、引き出しがたくさん増えてきたのだと自負しています。学生のみなさんには、自分の強みを持ったまま、ぜひ分野を横断してほしいと思います。その経験の一つひとつが、必ず次につながりますから」

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