MRI Research Associates
サステナビリティ事業部 
ヘルスケア・ウェルネスチーム
PROJECT STORY04
介護・医療機器グローバルニッチトップ企業の育成
超高齢社会を迎え、成長が期待できる医療・介護の分野で、海外市場に打って出る地元企業の育成を目指す茨城県。
MRAのヘルスケア・ウェルネスチームのメンバーは、画期的な製品の開発支援と、導入促進によって、
自治体、開発者、企業経営者、医療・介護の現場職員などの多くの人を支援している。
また、プロジェクトを通じて、新たな製品を必要とするすべての方々(患者・利用者など)への貢献を目指している。
古川 和良

サステナビリティ事業部
ヘルスケア・ウェルネスチーム
2016年入社
医学研究科 環境衛生学専攻 修了

大学院では物質が体内でどのように動くかを研究する薬物動態学の分野をテーマとして、マウス体内におけるトランスポーター(細胞膜上にある物質を輸送するタンパク質)の研究をしていた。「スピルバーグのSF映画とドイツのヘヴィメタルバンドのハロウィンのファン。好きなレスラーはレイ・ミステリオjr.」

Kazuyoshi Furukawa
今野 亜希子

サステナビリティ事業部
ヘルスケア・ウェルネスチーム
2017年入社
医学研究科 フィールド医学分野 修了
理学療法士、知的財産管理技能士

学生時代は、理学療法学に基づき、日本・インドのフィールド(地域・施設・病院)に飛び込み、介護予防に取り組むと同時に、国際比較をすることによって、介護予防推進策を模索した。趣味は写真、書道、ヴァイオリン。「マーラーの曲が好きで、同じ曲でも表現が全く異なるのが関心深くて、多様なオーケストラの演奏を聴き比べています。」

Akiko Konno

01
プロジェクトの背景/MRAの役割

自治体のニッチな産業支援をサポート

茨城県は、2015年から「グローバルニッチトップ企業育成促進事業」として、医療・介護機器の開発支援や導入支援を行っている。医療・介護・健康の分野における社会課題の解決に貢献する新たな機器の開発に取り組む中小企業を支援しようというものだ。

機器開発支援は、県内の中小企業から案件を募集し、グローバルニッチトップ企業育成推進会議の審議で採択されたものには、最大で年間2,000万円まで開発を委託する。導入支援は、県内の病院や介護・福祉施設を対象に、本事業にて交付が認められた機器の導入に際して、100万円を上限に補助を行う。

同事業は5年ほど続く予定で、3年目までは茨城県から三菱総合研究所(略称MRI)が受託して事業を推進してきた。4年目の2018年からは、MRAが委託を受け、機器開発と導入におけるコンサルティングのほか、推進会議の開催に係る連絡調整や事業全体の進捗管理に取り組んでいる。それを担当しているのが、古川和良、今野亜希子をはじめ、サステナビリティ事業部ヘルスケア・ウェルネスチームのメンバーだ。

古川
「私たちが携わっているのは、グローバルニッチという言葉のとおり、小さいながら世界に通用するような光る物を持っている中小企業を積極的に支援していこうというプロジェクトです。このプロジェクトには、機器開発の支援と導入支援の二つの柱があります。機器開発の方は、資金面も含めた臨床・実証試験の支援を行おうというもので、導入支援の方は出来上がった製品の販売促進・訴求支援をすると同時に、病院や介護・福祉施設が購入する際の資金を補助し導入を促進しようというものです」
今野
「本事業において、MRAでは、古川が開発支援、私が導入支援の責任者を務めています。ただし、導入支援は過去3年間で開発した製品が対象であり、開発の過程から携わることで、競合他社製品にはない強みを見出し最適な導入支援策を模索することができるため、私たち責任者二人を含むプロジェクトメンバーは開発と導入に限定して担当するのではなく、オールラウンドに支援プロセスに関わっています」
茨城県グローバルニッチトップ企業育成促進事業」のHP
MRAは、県内の優れた技術を持つ中小企業の発掘と成長を支援している

02
プロセス/MRAの役割と期待

誤嚥防止のとろみチェッカー、介護現場にヘルパー育(はぐみ)

開発、導入、それぞれの支援の対象はどのように決まり、MRAの二人は、それにどう関わっているのだろうか?

古川
「開発支援の審査は、基本的に推進会議の評価に基づいて茨城県が行いますが、県の要望で私たちも技術評価に加わっています。実現可能性、市場性、製品化した際の競争力、特許など優れた技術を持っているかといった様々な面から評価しました。茨城県は筑波研究学園都市や日立市をはじめ、研究者や技術者が集まっている土地柄ということもあり、意欲的なベンチャーや中小企業が多く、多数の応募がありました」

現在、どのような製品が、開発支援の対象になっているのか?

古川
「例えば、『とろみチェッカー』という製品をセンサー会社が開発中です。高齢になると、食べた物が食道ではなく気管に入る誤嚥を起こしやすくなります。誤嚥は、食べ物にとろみをつけることで防げるのですが、どのくらいの粘度にすればいいのか判断しにくいという声に応えて、とろみの具合を機器で分かるように開発がされています。機器の形状はスプーン型をしていて、病院、介護施設、在宅介護の現場などでの使用を想定しています。類似品のない画期的な製品のため、これは売れると私は考えています。また、脊椎の手術を受ける患者の負担が少なく早期回復や医療費削減などが見込まれる『低侵襲手術向けトランスバース』という医療機器の開発も進んでいます。昨年度は試作開発、今年度は上市に向けた実証試験を行っています。来年度には導入促進補助の対象機器として申請できる予定です」

導入支援の状況は、どうなのだろう。

今野
「導入支援では、導入先である病院や介護・福祉施設への購入時の資金援助のみならず、既存の競合他社製品および市場ニーズを把握した上で、導入支援対象製品の販促策を模索し、提言しています。その際、対象製品を開発した各企業と議論し、それぞれの営業リソースに応じて最大限の効果が出せるような方策を共に検討しています。例えば、導入支援対象製品のなかに、『ヘルパー育』という床走行型の電動リフトがあります。従来の一般的なリフトは、天井へのレール設置などの大工事を要し、経済的負担や建物の意匠性の低下、レールの範囲外では使用できないという活用範囲の制約がありましたが、本製品ではそれらの負担や制約がなく、簡便に、かつ多様な日常生活場面で移乗介助の負荷軽減を可能とします。
こうした導入支援対象製品の訴求ポイントを、市場調査に基づいて、導入支援対象企業と共に模索し、学会や医療・介護に携わっている方々が集まる会合など、訴求に有効な機会を活用して、製品を展示し体験型で紹介する場を設定している段階です。例えば、日本保健医療福祉連携教育学会学術集会の特別企画を企画し、日頃、直に関わる機会を得にくい、医療・福祉現場で働く専門職とアカデミックの学識者および企業の開発者とで、開発した製品を囲んで交流する場を設けました。また、実際に医療・福祉機器を使用する対象となる現場の医療・福祉専門職を対象とする調査票を作成して利用者の生の感想や評価を集め、データ収集・分析し、それを基に、各企業へ弊社からの助言を含めたフィードバックをしました。それらを訴求方法に反映させることによって導入促進につなげようとしています」

知見の広い二人が開発者や経営者にアドバイス

このプロジェクトに携わり、二人は何を感じているのだろうか?

今野
「応募してこられる企業の方々は、研究者気質というのでしょうか、利益以上に製品の開発や性能の向上に没頭し、情熱を傾けている方もいらっしゃいます。私も前職で商品開発に携わっていた者として共感するものがあり、個人的に、そういう気質を持った方が好きです。但し、ビジネスとしてはもちろん販売までの視点も必要です。開発から販売までの視点をもって、各企業をサポートすることが、我々が本事業に携わっている意義の一つであると感じています。また、ベンチャー企業や中小企業の経営者、開発者のなかには、自社や自身が秘めている可能性の大きさに気付かず、過小評価されている方が、思いのほか多くいらっしゃると感じました。小さく収まらずに壮大な目標をもって、『うちはもっと行ける』という自信と強い思いを持っていただくことができたら、もっともっと各社の力を存分に発揮していただくことができると感じています」

実は、古川も今野もキャリア採用でMRAに入社した。古川は、入社する前、企業の研究所に勤め、学生時代の研究の延長で薬物の体内動態や新薬の試験を行い、その後、知的財産部門で知財業務にも携わり開発支援に従事してきた。今野の前職は、住宅メーカーの商品開発だ。バックグラウンドが医療系である今野は、学生時代から現在に至るまで一貫して、「シニアの方々がただ寿命を長らえるのではなく、いつまでも自立して活き活きと幸せに暮らすことができるように支えたい」という想いを軸としてきた。この観点から、健康寿命を延ばす住環境を模索し、研究、商品開発をしていた。その過程の中で、研究・開発成果の特許出願も行っていた。

古川
「知的財産の仕事は自社の利益を優先するため、自分の視野が狭くなっていると感じていました。私は次第に、もっと広い視野を持って公共のためになる仕事をしたいと思うようになりました。そして、シンクタンクなら研究や知財業務の経験を活かしつつ、公共のためになる仕事ができると考えて、MRAに転職しました」
今野
「大学院時代に非常勤理学療法士として、臨床現場・施設・地域医療で医療・介護機器を実際に治療で使用していた経験があります。併せて、前職では、健康寿命を延ばす観点から、例えば、住まいという誰もが生活する日常生活の場を運動の場として活用し、身体機能を維持・向上する仕組みづくりなど、住宅メーカーとして貢献できることを研究し、商品として具現化していました。その過程の中で、毎年、弁理士と共に研究もしくは開発成果の特許出願の書類作成を行っていました。これらの経験から、医療・介護機器を使用する医療者としての視点とメーカーでの商品開発者としての視点を、グローバルニッチトップ企業育成促進事業で活かすことができていると考えています」
古川
「今野はメーカーに勤めていただけあって、製品を市場に出したときの強みなどの評価に長けています。知識や経験が豊富で、とても助かっています。また、自身も血と汗を流して商品を生み出していた経験があることで、開発者たちの苦労や葛藤・各種事情を理解し共感することができ、開発者たちへ心を寄せ、想い入れを持って本事業に取り組んでいる姿勢は、支援対象企業の開発者からの信頼を得ることに繋がっていると感じます」
今野
「古川は研究所勤務と共に知的財産に関する業務にも携わっていただけあって、本事業の対象企業の権利を守る観点からの助言、国際特許をはじめとする特許取得により各企業が知的財産による利益を得る観点からの助言に長けています。販売直後という一地点だけでなく、先まで見据えて企業のことを想う助言をする姿勢により、古川は企業からの信頼も厚く、共にコンサルティングをする上で大変心強いパートナーだと感じています」

03
今後の展望

世界トップシェア企業への飛躍を共に目指す

二人は、このプロジェクトを今後、どう導いていくつもりなのだろう。

古川
「茨城県のこのプロジェクトは、名称に『グローバルニッチトップ企業』と付いていることからも明らかなように、ニッチではあっても世界のトップをねらえるような企業の育成を目指しています。応募して採択された企業が製品を海外で販売し、世界的なシェアがある程度取れるようになるまで、私たちは支援したいと考えています」
今野
「そのためには、対象企業にとってまず必要なのは、成功体験ではないかと考えています。企業と私たちが一丸となって、まずは1件でも成功事例を早く実現したいと強く願っています。それにより、成功した企業はもちろん、それを間近に見たほかの企業も触発され、『自分たちもできるはずだ!』と自信とやる気による成功の連鎖が自然に生まれていくのではないかと考えています」
古川
「中小企業に限ったことではないのですが、優れた製品を開発して上市したとしても、大企業との競争や模造品への対策など、様々な懸念が予想されます。優れた製品の市場競争力を維持するために、特許などで権利を押さえておいた方が良い点をアドバイスするようにしています」
今野
「日本は超高齢社会の面でも先進国です。アジアをはじめ世界各国でも高齢化が進んできており、国民性や地域差はあれど、日本と同じような課題にぶつかり、同様の医療・介護分野の機器のニーズも高まっていくはずです。私たちが支援している製品の海外展開の可能性は十分にあると考えています。開発を支援している企業には、『自分たちの製品は、ほかの企業にはない、唯一無二の技術に裏付けられた物だ』という強みをしっかり自覚して自信を持ってほしいです。その強みを見出し、企業と一丸となってその強みを伸ばす方法や他社競合製品との差別化を図り、顧客に響く訴求の仕方を見出すこと、そして根拠を持って企業の自信の後押しをすることが、私たちの役割だと考えています」
古川
「我が国は製造業において、各メーカーが先進的な技術と製品を海外に送り出しています。しかし、医療機器業界の世界シェアの上位は欧米系の企業に占められ、国内市場においても少なくない品目で外資系企業が幅を利かせており、国際競争力の観点からは日本のメーカーは後れを取っているのが実情です。そうしたなかで、中小企業とはいえ、世界でシェアを確保できる企業が新たに生まれれば、大きな意義があります」
今野
「目標はもちろん海外進出です。その目標を見据えながら、まずは国内シェアトップの医療・介護機器の開発を目指します。私たちの関わった製品が、病院や介護施設で見かけるメジャーな製品になってくれたらいいと、二人でよく話しています」

Partner
開発支援対象企業様の声

低侵襲手術向けトランスバース開発企業

伴走コンサルとして、MRAさんには助けられています

株式会社エムテック
代表取締役 松木 徹

当社は、CNC旋盤による超精密機器部品製造の専門企業です。創業60年の会社で、以前は自動車部品を主に製造してきました。しかし、2008年のリーマンショック以降、お客様のコスト削減により自動車部品をはじめ様々な製品は、海外生産が主流になっています。私たち茨城県内の中小企業は生き残りをかけて、「GLIT」(グリット)と呼ぶ受注共同体を組織し、国の成長戦略でもある医療介護分野に参入することにしました。異業種10社の集まりのため、それぞれの専門を活かしてたいていの製品は開発製造できる自信があります。

現在、当社が茨城県から開発支援を受けている「低侵襲手術向けトランスバース」は、脊柱管狭窄症や交通事故による脊椎の手術の際、切開の範囲を小さくすることで、患者への負担を軽減する画期的な医療機器です。切開部が小さければ、出血は少なく、回復に要する期間は短く、医療費も削減できるなど大きなメリットがあります。元々は、新産業・新事業の創出拠点である、つくば研究支援センターからGLITに持ち込まれた案件で、茨城県のグローバルニッチトップ企業育成促進事業の公募に、当社は、昨年度は試作開発を申請し、今年度は実証試験を申請しました。完成後の販売先としては、国内の大学病院や整形外科病院、海外の大手医療機器メーカーなどを考えています。

MRAさんとのお付き合いは、実証試験の申請からになりますが、伴走コンサルとして経理処理やスケジュール管理をはじめ、私たちに足りない専門的観点から貴重な支援をいただいており、とても助けられています。その分、私たちは機器の開発に注力できるので感謝しています。これからは販路開拓などマーケティングや販売促進面でもぜひご支援いただければと願っています。

Formation