MRI Research Associates
サステナビリティ事業部 
脱炭素・エネルギーチーム
PROJECT STORY04
太陽光発電事業の当事者となって、
再生可能エネルギーの未来を考える
エネルギー自給率の向上や、温室効果ガスの抑制に寄与する「再生可能エネルギー」。
2012年7月、その普及・活用促進を目的とした「固定価格買取制度」がスタートした。
再生可能エネルギーに対する社会的な気運や関心の高まりを背景に、
三菱総合研究所グループでも、2013年頃から太陽光発電所の開発及び出資事業を行っている。
畠山 菜美

サステナビリティ事業部
脱炭素・エネルギーチーム
2011年
法学研究科

入社後は民間向けコンサルティング業務や、統計・アンケート、制度運用支援等、現場に近い業務に従事。学生時代にはビッグバンドでフルートを担当。最近は、道端の史跡案内に目を向けながらの街歩きが趣味で、運河沿いもお気に入り。20キロくらい歩く日も。

Nami Hatayama

01
プロジェクトの成り立ち

太陽光発電所を所有する会社の運用をMRAで

再生可能エネルギーの固定価格買取制度により、参入する業者が急速に拡大したのが太陽光発電事業だ。三菱総合研究所(以下、略称MRI)では、以前より再生可能エネルギーに関する政策に携わり、その立案・提案を行ってきた。そこで、実際に太陽光発電所を開発・運営していくことを通じて得られる知見を、より良い政策立案・提案にフィードバックしていくことを目標に、MRIグループ自らも事業を開始し、MRAの社員も開発・準備段階から参加してきた。

MRIグループ単独で事業化したのか。

畠山
「いえ、大規模な太陽光発電所の建設には、莫大な資金が必要です。このためMRIグループだけではなく、いくつかの企業と共同出資で太陽光発電施設を保有するSPC(特定目的会社)を設立し、そこが太陽光発電事業を運営する形を採っています。共同する企業は、例えば太陽光パネルを製造されている会社や、土木や電気工事の事業者、あるいは金融系など、発電施設の開発や運用に関する何らかのノウハウを持っておられます」

「このSPCには従業員がいません。そのため、SPCの実質的な運用・資産管理をMRAが担っています。中には、MRIが出資しておらず、運用だけ委託いただいているSPCもあります。現場の管理や保守などは他社へ委託しており、私どもは運転開始前の工事視察や、運転開始後の状況確認などに、年に数回現地に行っています」

「固定価格買取制度では20年間の売電期間が予定されていることから、各発電所はどこも20年ほど先まで運転を継続する見込みです。このため、本業務で最も大切なことは、日々つつがなく発電が継続され、SPCが収益を上げられるように、事業関係者と一緒に課題をクリアしていくことです。それには関係性の構築が重要となります。MRAとしても20年間業務を継続できるよう、体制や運用のさらなる安定化に向けて検討・研鑽しています」

具体的には、どのような業務を行っているのか。

畠山
「まずは、一般的に会社運営上で必要な、経営企画系や総務系の業務を担っています。収入・支出の管理や、事業計画の策定、決算・監査関連業務、出資者への配当、融資銀行との各種調整、あるいは公共物使用許可・道路占有許可等の許認可の更新、統計調査対応などです」

「そして、太陽光発電所に特有の業務として、発電所の運営・保守担当会社(Operation & Maintenance会社)から提出される月報・年報の確認、保守・修繕に係る計画の確認や実施状況の確認、資源エネルギー庁や出資者への運転状況の報告などを行っています。もしも、事故や天災などのトラブルが発生したら、その対応方針決定や資金手当て(保険や保証の利用など)の検討も行っています。また、事業用地の地権者や地域社会への対応業務があり、地権者死亡時の相続手続きへの対応や、苦情への対応なども担っています」

「発電所の企画開発についてはMRIの業務とし、グループ内で大まかに業務の棲み分けを行っています。ただ、MRAには実際の運用における知見やノウハウが蓄積されてきましたので、それを開発フェーズにフィードバックすることで開発のお手伝いもしています。運転を開始してからでないと分からないことがあるものです。例えば、隣接する敷地から受けるリスクや、毎月の資金管理における銀行との効率的なやり取りなどを開発段階・運用方法の検討段階で考慮しておくことが、後々の運用を考えると有効ではないかと思います」

02
取り組み/壁

関係者や協力者の
「言葉」や「思い」を大事にする

SPCを運用・資産管理する事務的な業務だけでなく、現場で起きる不測自体にも対応するには、多様な視点からの専門性が必要になってくるはず。MRAでは、5名のプロジェクトメンバーで数カ所の太陽光発電所を運用しているが、業務はスムーズに遂行できているのだろうか。

業務は多岐にわたっているようだが、特に大変だったことは。

畠山
「そうですね、業務内容が多岐に及ぶだけでなく、どれも専門性が高いため、付け焼刃の知識では対応できないことが多く大変です。また、ステークホルダーも『地権者、地元行政、出資者、融資銀行、建設事業者、O&M事業者、電力会社、会計事務所、監査法人』など多岐にわたり、そのほか『弁護士、司法書士、税理士』などに各種相談をすることも多いため、知識には幅も必要です」

「もちろん、必要な知識を自分で学ぶことは大事ですが、どうしても分からないときは、その専門分野で豊富な知識や経験を持つ関係先や協力先の力をお借りしてきました。例えば、太陽光パネルのことならパネルメーカーへ、銀行との交渉なら金融企業へという具合に、それぞれご専門の方々へ素直に相談や質問をして解決してきました」

「そして、毎年何かしら災害が起きていることが、やはり本当に大変です。プロジェクトリーダーになって間もなくの頃、いきなり大雨による災害が起きてしまい、発電設備そのものは無事だったものの、発電所内の地面が大きく損壊したことは強く記憶しています。予想外の被害が出まして、復旧資金をどう工面するかで苦慮しました」

「このように、SPCの運営には大変な緊張感があります。MRIグループだけの所有物ではなく、複数の出資企業が何十億円という費用をかけて開発した発電所ですから、赤字や損失を出すわけにはいきませんので」

日々、心がけていることはあるか。

畠山
「ステークホルダーに対し、その方々が大切にされていることは何かを考えて、向かい合うようにしています。相手方が欲しいと思う情報を重視して、ご連絡を差し上げるということですね。例えば、出資者に何かを報告するような場合であれば、まずは発電量の状況をお知らせすることから入ります。あるいは、もし事故が起きてしまった際なら、その方がまず何を聞けば安心につながるのか、伝え方も含めて考えています。そういった姿勢が、信頼や良い関係性を築いていくためには必要です」

「また、プロジェクトリーダーとしては、メンバー全員が気持ちよく仕事ができることを意識しています。まずは、各メンバーが得意な仕事を担当し、力を発揮してくれるように。そして一方では、同じ仕事に偏らないようにもしています。先ほどの、相手が大切にしていることを考えるという姿勢も、メンバーには共有しています」

03
現在地と展望

現場の声や体験を吸い上げ、
政策へ、そして未来へ、つないでいく

どの発電所も20年の売電期間を終えてやっと一区切りだ。その意味では、今はまだ成果としてはっきり目に見えるものが出来上がった段階にはない。とはいえ、多岐にわたる経験から蓄積しているものは確かにあるだろう。これをどう活かしていけそうか聞いてみたい。

現時点で成果と呼べるものはありそうか。

畠山
「この事業は、まだまだ入口段階です。成果が出るのはこれからでしょう。あえて言うならば、関係先の皆さまとお互いに、気軽にご連絡できる関係を築きつつあることが現状の成果と言えるかもしれません。日々何事もなく穏やかに、20年間しっかり運用することが目的の仕事です。よって、より安定的で持続可能な体制にしていくことが肝要です。その上で、発電所運営で知ることができた『現場感』を、政策提言分野の業務にフィードバックできればと思っています」

「例えば、再生可能エネルギー発電所の設備導入のためのガイドラインといったものがあります。その中には、借入の方法や発電所設計における注意点などが書かれています。ただ、私が本当に難しいと思うことは、別にあります。土地の借用に関する交渉であったり、太陽光パネルの故障要因であったり、土砂災害であったりします。現実的には、このようなことが大事ではないでしょうか」

「展望としては、本プロジェクトでは多種多様な業種の方とお付き合いできていますので、その関係性の中から何か全く新しい仕事を創出できればと思っています。プロジェクトから『何かが生み出される、何かが遺る』ように、今後も努力したいです」

個人的に得られたものは、将来の展望は。

畠山
「会社の仕組みや金融・会計・法律などに関する知識は格段に広がりました。事業部門で通常の業務をしているだけでは、触れることはできなかったでしょう。この経験や知識は、普遍的なものです。今後、社会人として生きていく上で、どこにいても、どこに行っても役に立つものと考えています。またそれ以上に、人との関係構築や、バランスのとり方などを学べた点が大きいと思います」

「そして、度胸がつきました。様々な方とお話をしますし、奥手になっている場合でもないので、どんどん前に出て、色々なことを聞いて吸収しています。私はこれまで、MRAとして初めての事業、あるいはあまり実績のない業務に就かせてもらう機会が多くありました。ですので、これから先も積極的に新しい事へ投入してもらいたいと思っています」

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