公共政策第一部
PROJECT STORY
明日は"いまの数字"から見えてくる
統計調査から浮かぶ、中小企業の力、日本の未来
統計調査から浮かぶ、中小企業の力、日本の未来
2024年の中小企業白書によれば、日本企業の99.7%、約300万社が中小企業*に該当する。
有効な支援とは何か。中小企業が進むべき先とは。それを見出すには、まず現状を知る必要がある。
中小企業の実態把握が不可欠であり、精度の高い調査が重要になる。
その代表的な調査が「中小企業実態基本調査」だ。
有効な支援とは何か。中小企業が進むべき先とは。それを見出すには、まず現状を知る必要がある。
中小企業の実態把握が不可欠であり、精度の高い調査が重要になる。
その代表的な調査が「中小企業実態基本調査」だ。
* ここでいう中小企業は、中小企業基本法で定義されたもの。
業種によって、資本金又は従業員数のいずれかが該当するものである。
例えば小売業では、資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人。
業種によって、資本金又は従業員数のいずれかが該当するものである。
例えば小売業では、資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人。
釜 由記子
2001年入社
自然科学研究科建築学専攻 修了
大学院では、地理情報システム(GIS)を用いて商業施設の立地特性分析を研究。入社後、国土交通省関連業務、民間企業の内部統制業務等のコンサル・アンケート業務、環境省関連業務を経て、統計業務に従事。学生時代に使用していた統計を自身で作成するとは思ってもいなかったそう。
Yukiko Kama
高津 翔子
2018年中途入社
人間関係学科社会心理学専攻 卒業
大学では心理統計を専門とする。新卒入社は信用調査会社。調査員(企業の信用調査)を経験後、市場調査部へ。その後MRAに入社し、現在に至る。
Shoko Kozu
01
調査の概要・当社との関わり
その実態調査に関わり15年以上、現在では単独で受注
様々な統計事業を受注している公共政策第一部で、中小企業実態基本調査に関わって長いそうだが。
高津
「この調査は、中小企業の経営環境の把握のため、中小企業庁が2004年から実施しています。中小企業の財務情報、経営情報などの基礎的なデータが20年分以上あり、長期的なトレンド分析が可能です」
「調査の『実査*』部分を2011年から親会社である株式会社三菱総合研究所が受託しており、当社も一部作業を担ってきました。この間に調査への理解を深め、算出した指標を正確に読み取る知見を培い、2019年から当社単独のプロジェクト(以下、PJ)として、受託しています」
* 本調査における『実査』とは、統計法に準拠し、調査票の配布・回収から回答内容の審査、疑義照会に至るまでの一連の現場工程を指し、統計結果の信頼性を左右する中核プロセス。
「調査の『実査*』部分を2011年から親会社である株式会社三菱総合研究所が受託しており、当社も一部作業を担ってきました。この間に調査への理解を深め、算出した指標を正確に読み取る知見を培い、2019年から当社単独のプロジェクト(以下、PJ)として、受託しています」
* 本調査における『実査』とは、統計法に準拠し、調査票の配布・回収から回答内容の審査、疑義照会に至るまでの一連の現場工程を指し、統計結果の信頼性を左右する中核プロセス。
釜
「日本で中小企業のみを対象とした政府統計調査は、この調査だけです。細やかなデータを毎年とっており、これらを統計表にまとめて調査結果を公表しています。結果は、我が国の中小企業白書に使われるだけでなく、国連が導入勧告している国民経済計算(GDP統計)にも一部使用されており、国の経済状況を把握するデータとして非常に重要かつ意義のある統計調査です」
「当社の統計事業は、公的統計作成における高度な専門技術の提供、データ管理システムの構築、品質保証プロセスの確立などを通じて、持続可能なデータ社会の実現に取り組んでいます。公的統計作成と運営における確実性・信頼性の確保や、官公庁との長期的な信頼構築によって、我が国の統計行政の推進における重要な役割を果たしてきました。これを当社で主に担ってきたのが、公共政策第一部です」
「当社の統計事業は、公的統計作成における高度な専門技術の提供、データ管理システムの構築、品質保証プロセスの確立などを通じて、持続可能なデータ社会の実現に取り組んでいます。公的統計作成と運営における確実性・信頼性の確保や、官公庁との長期的な信頼構築によって、我が国の統計行政の推進における重要な役割を果たしてきました。これを当社で主に担ってきたのが、公共政策第一部です」
02
業務の中身、苦労 統計実務とは
国の将来に関わるデータだから、不正確な報告は許されない
統計調査業務と本PJに関して詳しく知りたい。また、当社が長く委託され、遂行できている理由は何だろう。多くの企業に協力いただくことも難しそうである。
高津
「中小企業基本法に基づいて国内中小企業11産業から11万社を無作為に抽出し、調査をしています。その結果を基に国内約300万社の実態を推計しています。調査は年度単位で行われ、準備開始から確報の公表まで1年半を要します」
「一般的に、統計調査は、調査対象者を決定し調査対象者名簿を作成する『標本設計・標本抽出』、実際の調査を遂行する『実査』、そして調査結果を計算する『集計(推計)・分析』の大きく3フェーズに分けられます。単一のフェーズで請け負うPJもありますが、この中小企業実態基本調査ではすべてのフェーズを一貫して請け負っています。そのため、『学術的な統計の知見に基づいた標本設計』や『結果の集計・推計ノウハウ』だけでなく、統計法を踏まえた『調査事務局の運営』と『調査の進行管理など大規模調査を遂行する実務的なノウハウ』が不可欠となっています。」
「一般的に、統計調査は、調査対象者を決定し調査対象者名簿を作成する『標本設計・標本抽出』、実際の調査を遂行する『実査』、そして調査結果を計算する『集計(推計)・分析』の大きく3フェーズに分けられます。単一のフェーズで請け負うPJもありますが、この中小企業実態基本調査ではすべてのフェーズを一貫して請け負っています。そのため、『学術的な統計の知見に基づいた標本設計』や『結果の集計・推計ノウハウ』だけでなく、統計法を踏まえた『調査事務局の運営』と『調査の進行管理など大規模調査を遂行する実務的なノウハウ』が不可欠となっています。」
釜
「各フェーズで実施すべきことは多種多様で、一部のフェーズの担当者であっても、調査内容の熟知と、技術・知見が求められます。大規模な統計調査の始めから終わりまでの工程を担える企業は国内に多くは存在せず、その点は当社の強みです。本調査の重要性について調査対象の企業側にご理解いただく努力を続けており、11万社を対象にした大規模な調査ではありますが、約半数の回収率を確保できています」
各フェーズでは、どのようなことをしているのだろうか。
高津
「『標本設計・標本抽出』フェーズでは、調査の対象となる企業を抽出し調査対象名簿を作成します。無作為に抽出しているといっても、対象とする業種区分や、抽出・依頼する会社の数などの計算は学術的な理論に基づいています。その後、その名簿に基づき、調査資材の発送を行います」
「続く『実査』フェーズでは、調査票の作成(オンライン調査画面の構築含む)、紙の調査票の郵送、配布した調査票の回収(回答方法は郵送もしくはオンライン)、郵送回答分のデータ化などを行います。また、調査事務局を設営し、調査票配布後には調査対象企業からの電話問合せに対応します。回答がない企業へは協力依頼のお電話、回答内容に不明点があれば電話による確認をします。調査項目としては、売上高や経常利益などのほかに、事業継承の予定、賃上げ実施の有無、企業買収・合併の有無など調査項目は30問弱ほどで、多岐にわたります」
「続く『実査』フェーズでは、調査票の作成(オンライン調査画面の構築含む)、紙の調査票の郵送、配布した調査票の回収(回答方法は郵送もしくはオンライン)、郵送回答分のデータ化などを行います。また、調査事務局を設営し、調査票配布後には調査対象企業からの電話問合せに対応します。回答がない企業へは協力依頼のお電話、回答内容に不明点があれば電話による確認をします。調査項目としては、売上高や経常利益などのほかに、事業継承の予定、賃上げ実施の有無、企業買収・合併の有無など調査項目は30問弱ほどで、多岐にわたります」
釜
「そして『集計(推計)・分析』フェーズでは、各社の回答内容を審査した上で、結果の集計・推計や、公表物(統計表、結果の分析レポート)の作成、政府のシステムで公表するためのデータ作成を行っています。」
「大きなPJですので、調査票の印刷・発送や、企業からの問合せ窓口対応、回答のデータ入力など、特に『実査』フェーズでは複数の協力会社とともに実施しています」
「大きなPJですので、調査票の印刷・発送や、企業からの問合せ窓口対応、回答のデータ入力など、特に『実査』フェーズでは複数の協力会社とともに実施しています」
知りたい回答(数値等)を得るには、確かなノウハウが必要とされそうだ。
釜
「各フェーズにおいて作業担当が複数名いますが、3つのフェーズを一気通貫して、全員が同じ理解と意識で業務に当たることが求められます。これは調査票の作成作業に限った話ではなく、統計を作成する目的を共通事項として理解する必要があります。この理解がないと、重篤なミスが起きるリスクが高まります」
高津
「例えば、調査票の質問項目は、聞き方を間違えると全く意図しない答えが返ってきてしまいます。国の統計調査なので、間違った場合の責任は大きい。調査票の1設問の確認においても、正確に記入しやすい配置やわかりやすい表記になっているか、間違えた説明をしていないかなど精緻に確認します。また、本調査の調査票の内容は全業種同一です。設問の追加・変更は調査主体である中小企業庁が行いますが、全業種の企業に伝わるものになっているかなどの観点から当社で確認し、提言することもあります。その見極めには、統計のことだけではなく、中小企業のこともわかっている必要がありますが、当社にはこれまで積み重ねてきた知見やノウハウがあります」
作業量が多く、専門性を求められそうな「集計(推計)・分析」は特に大変なのではないか。
高津
「実は集計(推計)・分析に入る前の『実査』フェーズにおける回答内容の『審査(チェック)』が、もっとも大変な部分かもしれません。回答があった5万件以上の回答内容をすべて審査し、疑問点があれば電話を入れるなど回答企業へ直接確認しています。例えば、計算誤りによる合計の間違いや、桁間違いなどの回答があります」
釜
「ここ3~4年、本統計調査の品質確保に注力してきました。正しい結果の算出には、『実査』フェーズにおける各作業が適切であることが大前提であり、そのためにプロセスごとに第三者チェックを導入しています。重要な点を十分に理解し、正しい手順を再確認して、作業ミスの防止に取り組んでいます。『集計(推計)・分析』フェーズにおいては、回答データが適正であること、集計(推計)・分析がルールどおりに処理されていることが重要です。当社には法人企業や個人企業の決算情報の知見に基づくデータ審査、集計結果チェック、公表資料チェックのノウハウがあり、効率的かつ高品質に統計結果を提供できる強みがあります」
03
調査の成果と展望
さらに必要とされ、未来に貢献する統計データを
統計は国家のインフラである
長らく調査に携わり培ってきた知見やノウハウを活かして、確かな業務を遂行し続けているMRA。本PJの成果と、現在のクライアントからの評価について聞きたい。
釜
「本調査結果は、統計表や国の主要な動向分析レポートという形で毎年公表され、中小企業庁が効果的な施策を検討する上で何かを試算される際などにも役立っています。さらなる利活用という観点では、国内最大級のオープンデータプラットフォームである地域経済分析システム『RESAS』において、中小企業実態基本調査の結果を活用した『中小企業経営分析』のメニューが2025年10月より追加され、統計結果をグラフや地図に可視化し、産業構造が一目でわかるよう表示することが可能となりました」
高津
「中小企業庁からは、調査の実施期間や費用が限られる中で、一定数以上の回答を集め、結果を効率的に作成し、精度を保った結果を提供できていること、その統計結果作成プロセスの適正さをしっかり確認し品質を確保していることについて高い評価をいただいています」
今後の展望と、いま取り組んでいることについてはどうだろう。
釜
「中小企業実態基本調査については、経済環境や企業を取り巻く状況の変化を的確に把握するために、今後も継続して実施されていくべき重要な調査であると考えています。本調査を通じて作成される統計データは、過去と現在をつなぎ、未来の日本を形づくるための確かな基盤となるものです。そして、これらのデータを継続的に積み重ねていくことで、中小企業の実態や可能性が正しく理解され、次の施策や支援につながっていくことなり、中小企業の持続的な発展を支えていくと感じています。当社が中小企業実態基本調査を担い続けることは、中小企業の未来を支えることに貢献していくものであると考えています」
高津
「中小企業実態基本調査は実施から20年以上経ち、回答方法が郵送からオンライン主体になるなど調査方法も変化してきています。こういった調査環境の変化に対応し、現在の処理フローを変更することは容易ではなく、10年程度で抜本的なフローの見直しや業務効率化、システム化などが必要になります。そこで近年は、これまでに得たノウハウを活かし、この調査の見直しに力を入れているところです。例えば、オンライン調査への移行により調査票の郵送数を抑えるなどの提案ができるのではないでしょうか」
釜
「また、進化するデジタル技術や新しいデータ形式への柔軟な適応力を活かして、未来志向の統計作成とデータ管理に取り組み、統計業務の効率化と品質向上を目指し続けています。例えば、各分野でAIの導入が進んでいます。調査を熟知している当社が、統計事業の『実査』フェーズにおいてAI活用などを進め、調査対象企業やクライアントのご負担を軽減し、円滑に調査が実施できるような提案ができればという夢があります」
高津
「当社の統計事業としては、中小企業実態基本調査だけでなく、企業を対象とした様々な統計調査を行っており、データ管理のための独自の統計調査システムを開発し活用しています。それらの技術を、今後は統計業務全般の効率化やデータ精度向上に転用していきたいと考えています。品質面においても、弊社は2021年に日本産業規格*を取得し、規格が要求する業務プロセスを実行しています。統計調査サービスにおいて、高品質なサービスの提供をこれからも追及し続けます」
*「市場・世論・社会調査及びインサイト・データ分析 -用語及びサービス要求事項に関する日本産業規格(JIS Y 20252:2019)」の認証区分<C:調査員非介在型定量調査>
*「市場・世論・社会調査及びインサイト・データ分析 -用語及びサービス要求事項に関する日本産業規格(JIS Y 20252:2019)」の認証区分<C:調査員非介在型定量調査>