MRI Research Associates
データサイエンス事業部 
mif事業チーム
PROJECT STORY11
国内最大級の定量・定性データベース、
生活者市場予測システム「mif」を運営
2018年春、NHKスペシャルで、人工知能AIが日本人の働き方を考察する番組が放送されて話題になった。
AIが分析に利用していたのは、mifの膨大な生活者の意識データだ。
視聴者からデータサイエンスの専門家まで驚かせたmifは、三菱総合研究所(以下、略称MRI)が開発し、MRAが運営している。
橋本 友範

データサイエンス事業部
mif事業チーム
チームリーダー
2016年入社
経済学部 公共経済学科 卒

中学時代は剣道部、高校ではバレーボール部。「休日は子供が幼いので一緒に過ごす時間を大切にしています。それ以外の娯楽は読書で小説。高杉良さん、山崎豊子さん、東野圭吾さんなどを読んだりします」

Tomonori Hashimoto
松下 淳子

データサイエンス事業部
mif事業チーム
2017年入社
法務研究科 法務専攻 修了

高校時代はオーケストラのコンサートミストレス、大学時代は室内楽で演奏。「最近、雑誌の読み放題WEBサービスに加入しました。普段手にしない雑誌を読むのは刺激的です」

Junko Matsushita

01
存在意義

膨大な定量データと本音の発言を集めた定性データ

2018年3月3日に放映されたNHKスペシャル「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン」は、NHKが開発した社会問題解決型AIが、日本人の働き方を分析する番組であり、NHKが独自にAIに取り組むということで話題になった。同番組のAIには、MRIとMRAが7年にわたり毎年3万人から集めた、生活者市場予測システム「mif」の延べ21万人分の生活者の意識データを読ませていた。
AIが分析するデータ、「mif」とは一体、何だろう? mifを担当しているデータサイエンス事業部の橋本友範、松下淳子に、mifの目的や意義、将来性などを説明してもらった。

橋本
「mifは、生活市場予測システムの英語名Market Intelligence & Forecastの略称です。mifは、毎年行う生活者3万人、シニア1万5000人を対象にした2,000問の設問項目のアンケートからなる国内最大級の定量データベースと、女性200人、シニア300人を対象として集めた定性データベースMROC(Marketing Research Online Communities)の二つからなるリサーチシステムです。MRIが開発し、MRAが運営しています」
松下
「定量データベースは、数の多寡や傾向などを数値で集計します。一方、定性データベースは、各人が自分の意見を書き込むネットの掲示板サイトをイメージすると分かりやすいと思いますが、意見や感想など数値で表せない情報の集積です。例えば、『あなたが最近買った物は何ですか?』といった問いや話題を司会者が投げかけ、会員がそれに答え、さらには相互に交流しながら発言を続けます。定量データは2011年から年1回3万人を対象に行っているウェブアンケートによるもので、MROCの定性データは、2012年から常設コミュニティの中の発言として継続的に蓄積されているものです」

データサイエンティストを驚かせるmifの可能性

NHKのデータサイエンティストを感心させたのは、年間3万人×2,000問という膨大なデータの集積もさることながら、mifの独自性だったという。

橋本
「mifは、マーケティングで限定的に利用されるような消費によったデータではなく、消費者より上位の概念である生活者そのものを分析するために集めたデータという特徴があります。データサイエンスの専門家から見ても『国内には、ほかにこのような経年のデータはなく、かなりユニークな存在だ』と言われました。例えばこれは番組中の分析で取り上げられたことですが、『水道の蛇口をこまめに閉める、あるいは閉めない習慣と、仕事の満足度には相関がある』という分析結果がありました。相関や因果の分析自体の評価は置いておきますが、水道の蛇口をこまめに閉める、閉めないといったような生活意識・行動を詳細に調べたデータは、mif以外にはまずないと思います。そのようなデータが『思いもよらない意識や行動同士が関連する可能性を広く発見できる』ということで非常に有用だという評価を受けたのだと思います」
松下
「mifが高く評価されている要因は、やはり年間3万人に対する2,000問のアンケートというスケールの大きさです。通常のマーケティングリサーチで集めるサンプル数は数百から数千、設問数は多くても100問程度ですから、3万人×2,000問は破格です。mifのサンプル数が多い理由は、年齢、職業、居住地など属性によるセグメントで細かく分割していった場合の信頼性を確保するためです。マーケティングリサーチでは1つのセグメントのサンプル数は、分析結果の信頼性を鑑みて100サンプル程度を下限とするケースが少なくありません。アンケートのサンプル数が3万もあれば、様々な属性で分割していっても100サンプルを上回ります。例えば、『北海道の男性の年代別』としても、各年代100サンプルは確保できます」

02
開発背景/強み

「消費者」ではなく、「生活者」の動向が分かる

mifのような唯一無二といわれるデータベースがつくられたのは、なぜだろう?

橋本
「mifが始まったのは2011年ですが、2008年にリーマンショックがあり、それに続く2011年3月の東日本大震災というとても大きな世の中を動かす事象によって、社会秩序が変わり、新しい価値観や規範、生活行動が生まれた年と位置付けられています。mifはその後の社会の方向性を明らかにし、ビジネスチャンスを発見するための羅針盤とするというコンセプトで開発された経緯があります。マーケティングリサーチで取得されるデータはマーケティングプロセスにおける活用目的に忠実ではあるのですが、消費そのものや消費行動に関連するデータに集中していることが多いと思います。mifはシンクタンクが行う調査だからということもありますが、社会全体、生活者、消費者というように多層でとらえることで、構造から個まで連なる変化や方向性を見ることに主眼をおいているといえます」

では、mif開始の翌年、2012年にスタートしたMROCの特長は、何だろう?

松下
「MROCは、端的に言えば、調査専用のクローズドなオンラインコミュニティです。MROCは、『質問し、答えてもらう』という従来型の調査とは異なり、参加者同士の交流によって生まれるグループダイナミクスと、自由な会話を傾聴すること(リスニング)により消費者インサイトを発見する調査手法といわれています。海外では主にメーカー主導の顧客ロイヤリティ向上の仕組みとして、マーケターにより活用されてきましたが、日本では主にマーケティングリサーチ会社がその消費者インサイト発見の成果に着目して、2012年頃からサービス化してきました。そのような背景で、MRIは、独自のコミュニティ運営において、女性200人とシニアの男女300人に生活全般について語ってもらう試みを始めたのです。サービス開始以来、2018年末の時点で150万件の発言が蓄積され、生活者のインサイトを発見・発掘します。まさに言葉のビッグデータです」

現代人のライフスタイルを浮き彫りにする

特定の顧客を前提としないmifは、事業として成り立っているのだろうか?

橋本
「mifには現状大きく二つのビジネスモデルがあります。一つは会員ビジネスで、データベースと分析ツールを会員のお客様に提供し、目的に応じて利用してもらい、継続的にその対価をいただくことです。データの有効な活用方法が分からないお客様には、セミナーやワークショップを開くなど、データの読み解きや活用の手助けをしています。もう一つは、会員のお客様やMRIグループ社内ユーザーからの追加調査の受託です。3万人のうち調査目的に合った対象にアンケートを依頼し、取得した結果を2,000問の調査と紐づけて、お客様に提供するのです。例えば、自社のユーザー、同業他社のユーザーはどんな特徴を持っているか、スイッチユーザー、見込みセグメントはどうか。ほんの数問の追加調査でも、2,000問調査との組み合わせにより、生活者の意識、行動、ライフスタイル全般に広がりを持って違いを分析することが可能になります。現在、メーカー、広告代理店、大学などのお客様が会員としてmifを利用されています。また、MRI・MRAの社員は、自由にmifを使えますので、様々な事業や企画の中でmifのデータを活用しています」
松下
「私は、前職在職中にmifを知ってファンになり、MRAに転職したのですが、mifの優れている点は、やはりアンケートがカバーする分野が極めて広いとともに、分類が極めて細かく、現代社会を的確に反映していることです。ほとんどのアンケートでは、女性を年代や婚姻状態で分ける程度ですが、実際の社会では、年代の境目があまり意味を持たなくなっている一方、子どもの有無や働き方が、ライフスタイルや価値観に大きく影響しています。mifでは、子どものいない共働き、子どものいる共働き、専業主婦から仕事に復帰した人、といったように細かなライフコースで分けた情報を得ることができます。それがmifのお客様からも好評な点です。また、MROCの方も、自宅や外出先など、どこからでもアクセスして意見を述べることができるため、『お子さんの様子を実際に見て答えてください』といった問いかけもできて、グループインタビューなどよりもリアルな情報を入手することができます」

03
今後の展望

お客様の利便性を考慮し、データ連携の仕組みをつくる

mifが画期的な情報蓄積・分析システムであることは分かったが、今後はどのように発展していくのだろうか?

橋本
「ビジネスとして安定させるためには、長期的に認知度を上げ、利用を増やしていく活動が必要だと考えています。そのため、最近では、例えばマーケティングや統計学、経営学などを教えている大学に営業に行き、授業で利用していただいて、卒業後、仕事や事業で使ってもらえるような仕組みに寄与する取り組みなどをしています」
松下
「mifは民間企業の経営企画やマーケティングリサーチ、研究などに活用されることが多いですが、現在では、マスメディア、官公庁、研究機関などが、国民の意識を知るために利用するケースも増えています。また、日本市場に関する知見を求めて、外資系の企業も興味を示しています。電力や鉄道などのインフラ関係の会社が、沿線や地域の住民の生活意識を調べるために利用するといったこともあります」
橋本
「お客様を増やしていくだけでなく、mifの使い方を増やして、高度化していくつもりです。言い換えれば、お客様の目的や要望とmifができることの接点を見出して、お客様にフィットしたデータ提供の仕方を考えていきます。それにより、お客様が自社のマーケティングツールにmifを連携させて成果を出していただくことができるようになると思います」

mifの可能性は、これからさらに広がり、事業は拡大していく。お客様の多様な目的に応じてシステムを設計できる人、このサービスを広めたい人、社会調査に興味のある人……。mif事業チームは新たな人財を必要としている。

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