MRI Research Associates
博士課程出身社員座談会
VOICES
博士が、その専門性を楽しんで発揮し
日本の未来に役立てられる機会が、ここにある。
ときに苦しみ、ときに楽しみながら、博士号を取得したからこその矜持や迷い。
自分を活かし、夢を実現する職場として、シンクタンクは、MRAはどうなのか。
博士課程出身者が経歴を振り返りながら、現在の思いを語り合った。
櫻木 俊輔

数理システム事業部
広域社会解析チーム
チームリーダー
2020年入社(中途)
理工学研究科総合デザイン工学専攻
後期博士課程修了 博士(工学)

博士課程では、日本学術振興会特別研究員(DC1)。大学附設研究所での研究員を経て業歴入社。シンクロトロン放射光を用いた物性物理学の実験的研究に取り組む傍ら、実験の空き時間には理論的研究を行っていた。現在は、理論的研究の際に身につけた大規模数値計算技術を、他分野の政策意思決定に活用するチームを設立し、そのマネジメントを担っている。

Shunsuke Sakuragi
中塚 徳継

数理システム事業部
先進技術チーム
2022年入社(中途)
理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻
博士後期課程修了 博士(理学)

博士課程へ進学する前から「世界」を意識。在学中にアメリカの研究所で学んだり、卒業後にはドイツ・ダルムシュタット工科大学で反陽子を捕獲するイオントラップの研究をしたりと、精力的に活動。専門的な知見を活かした業務を中心に、将来大きなインパクトを与えうる技術に関心を持っている。趣味は旅行(できれば海外)。

Noritsugu Nakatsuka
小林 和樹

サステナビリティ事業部
水・資源循環チーム
事業リーダー
2020年入社(新卒)
生物システム応用科学府
食料エネルギーシステム科学専攻
5年一貫制博士課程修了 博士(農学)

博士課程では、日本学術振興会特別研究員(DC2)。博士課程教育リーディングプログラムを修了。土壌や温泉堆積物を対象にした分子環境化学を専攻しつつ、水質汚濁防止法や土壌汚染対策法に関する環境法政策論的研究にも取り組んでいた。 好きな言葉は、「Always do, what you are afraid to do.(最も困難な道に挑戦せよ。)」

Kazuki Kobayashi

01
追求したかった専門性、博士課程だから得られた経験

博士課程への進学理由と、研究内容を教えてください。

櫻木
私は、何かしら特定の分野で誰にも負けない専門性を持ちたかったことと、実験や学会活動が楽しかったことから博士課程への進学を決めました。研究テーマは物性物理学の、特に磁性体に関する実験・理論的研究でした。超薄膜と呼ばれる数原子層の薄膜を作り、それをシンクロトロン放射光を用いて測定し、理論計算との比較から磁気機能の起源を探っていました。実験では国際的な実験施設を使わせていただく機会も多く、楽しく過ごしていました。
中塚
私も物理出身ですが、博士課程へ進んだのは、世界にチャレンジしてみたかったからです。修士課程は助走段階という考えでした。櫻木さんとは少し毛色が違い、サイクロトロンを使った中性子過剰な原子核の実験、特に集団運動(Collective motion)を研究していました。実験では放射線検出器の開発や、放射線輸送シミュレーションなどを行っていました。小林さんは、環境問題への興味などですか。
小林
そうですね、人が末永く地球に暮らしていくための社会づくりに貢献したいという目標を持っています。その実現に向け、環境科学×政策×現場に関わる仕事をしていくために専門性が必要だと思ったことと、熱意をロジカルに説明することで周囲を巻き込める人間になりたいと考えたことが、進学の大きな理由です。5年一貫制博士課程に進学して研究以外のことも学びつつ、放射光を用いたマイクロスケールでの元素挙動の理解から、科学的データを人々の生活にどのように反映させるかといったリスクガバナンスの検討まで、環境をテーマに幅広く研究していました。お二人には、どんな思い出がありますか。
櫻木
博士課程では、主にSPring-8(兵庫県にある、世界最高性能の放射光を生み出せる大型放射光施設)に何度も滞在して実験を行っていたことが強く印象に残っています。SPring-8は山を切り開いて作られた施設で、自然豊かでありつつも最先端の研究設備を兼ね備えた環境でしたので、ひたすら研究に集中できました。贅沢な時間の使い方ができたと思っており、とても良い思い出です。
小林
私もSPring-8を用いたことがあります。SPring-8の施設はすごく広くて、施設内を自転車で移動しますよね。私の場合は野外調査に出ることが多く、未利用の温泉水からできた温泉堆積物(湯の花ともいう)を採取しに湧水地に行ったり、アフリカ・タンザニア中の農地の土壌を採取するために毎日数百kmの距離を車で移動したり、移動に苦労してばかりでした(笑)。
中塚
苦しかった思い出って、ありますよね。研究は一筋縄ではいきません。ある実験では「なんとかならないか」って苦闘しているうちに、気づけば4日も経っていた。課題解決力と言いますか、博士課程で鍛えられたと思います。

02
「政策の近く」で国や社会に貢献したいという共通の思い

学究の道ではなく民間企業、中でもMRA入社を選んだ理由は?

中塚
博士号を得た後にポストドクターへと進み、しばらく海外で研究をしていましたが、ずっと留まってはいられないと感じ始め、コロナ禍をきっかけに帰国。日本の大学にも1年半ほどいたのですが、より政策に近い側で活動したいと考えました。民間企業の中でも幅広い専門性を必要とするシンクタンクに魅力を感じ、馴染みやすい雰囲気があって、一緒に仕事をしてみたいと思える人が多かったのがMRAでした。
櫻木
私も一度アカデミアへ就職しています。そのまま大学教員になることも考えましたが、JREC-IN(研究人材のためのポータルサイト)でMRAの募集を見つけ、世の中のことを知ろうと軽い気持ちで応募し、MRAを知りました。日本に住んで世の中のためにしっかり働きたいと考えていた私にとって、MRAなら政策・社会課題解決に重きを置きながら高い視座で活動できるだろうと、面接を通じて期待を覚えたことが印象的でした。面接では、これまでの自分の研究成果を説明するとともに、自分が短期的に新規開拓できるマーケットや、中長期視点で開拓が見込める仕事について話したところ大変歓迎してもらえ、面接中にいただいた「やる気になればやりたい事業を創ることもできる」という言葉に惹かれ入社を決意しました。
小林
「現場、専門性、政策」といったキーワードで自分の進路を考えたときに、民間企業等への就職に興味が膨らみました。当初は開発コンサルタントを検討していましたが、自分には専門性も無く時期尚早と感じていたため、それなら国内の支援に携わって専門性を身につけるべきだと考え、国内シンクタンクに目を向けました。その中で、MRAのインターンシップに参加する機会があり、三菱総研グループが元々官公庁への支援に強くその業務の中核をMRAが担おうとしていることや、私の興味ある分野に今後MRAが力を入れていくことを知りました。さらに、個人が興味ある業務に挑戦できる風土があり、社員一人ひとりの丁寧で優しい雰囲気も私に合っていると感じMRAを選びました。

その他博士課程出身社員の声① | MRA入社理由

社会貢献がしたい、現場(社会課題が発生している現場・支援を必要とする側と、対応を行う現場・支援を行う側の両方)の温度を感じられる距離に身を置いて仕事をしたい、博士課程で培ったスキルを活かしたい、という思いを持ちながら進路を検討していました。それを実現できる業種を考えた結果、たどり着いたのが官公庁の支援に強みを持つシンクタンクでした。実際働いてみて幸い、いずれのニーズも満たす環境だったため、毎日非常にやりがいを感じています。
また、MRAは個人の専門性ややりたいことを強くリスペクトする社風があるように思います。皆さん総じて非常に勤勉です。互いの良いところを認め合い、高め合えるような仲間がきっといる、と思えたことも入社を決めた理由です。

03
新たな仕事やアイデアを「獲る、創る、見つける」ことの魅力

現在の仕事内容と面白さ、やりがいについて教えてください。

小林
入社以来ずっと、希望していた資源環境問題に広く携われています。現在は事業リーダーとして、資源循環事業をどのように成長させていくか構想し、新たな業務獲得へ向けて営業活動ができていることに、とても大きなやりがいを感じています。アカデミアでの研究とは違い、ここではお客様に納得いただけるような成果物を納めることが求められます。期待に応え、ときにそれを超える仕事ができた際は、「誰かのために」という気持ちが強い私にとって大きなよろこびとなっています。そして、社内外からのお声がけが最近増えてきたことに手応えを感じています。お二人は、いかがですか。
櫻木
小林さんは事業を開拓する、ビジネスデベロップメントのリーダーですね。私はそれとは異なり、マネジメントロールとして部内のチームを取りまとめています。チームでは、アカデミアの方々と共同で新しい学際分野、特に社会課題に対する施策の効果を事前にシミュレーションする技術を研究しています。これは私が入社直後に作った仕事の延長にあるため思い入れを強く持っており、実務にフルコミットしたい気持ちがありつつも、最近は人材育成を考慮し、プロジェクト遂行の大部分をメンバーに任せています。また、チームを運営する上では、チームの事業やミッションが「メンバーが興味を持てる仕事」であり続けることを意識しています。自分の好きな仕事の推進との両立は難しいものの、事業やメンバーに成長が見られたときは非常にやりがいを感じます。
小林
櫻木さんが作られた仕事とは、コロナ禍でのシミュレーションのお話ですよね。
櫻木
そうです。既存分野に新たな技術を導入し、政策評価に資するシミュレーション技術を開発する第一歩を踏み出せたと思っており、実際にこの成果は様々な方から評価してもらえました。この研究を通じ、医学界でも高度なシミュレーションを活用して政策意思決定を行うという流れが国外ではでき始めていることを知り、これを日本にも根付かせるとともに、海外に負けない新しいモデルを作ることをチームの目標に掲げました。その実現のため、学会講演や国内のステークホルダーに働きかけつつ、MRAの存在感も高めています。それが今最も楽しめている仕事です。
中塚
私は現在、事業リーダーなどの役割は担っておらず、割と自由に仕事しています。主な業務としては、先端技術を中心とした国内外の動向調査や、専門知識を活かした物理学分野のシミュレーションを軸とした仕事を担当しています。アカデミアの基礎研究から生まれた技術シーズや、諸外国における最新の研究開発動向を政策側へ報告・橋渡しすることに、やりがいを感じています。また、アカデミアの先生方と協力して課題解決に取り組むことには、純粋に知的な面白さがあり、新たなアイデアがうまく行ったときには大きな達成感があります。近年、注目される量子コンピューターなどは私の専門性を活かせる領域で、楽しんで取り組んでいます。
櫻木
同じ部署なので様子を目にしますが、中塚さん、本当に楽しそうですよね。当部署には数物系の出身者が多いのですが、彼らも非常に楽しそうに取り組んでいる姿は見ていて嬉しくなります。やはりMRAには大学院などで培った能力を活かせる仕事があることを実感しており、とても貴重なことだと感じています。

04
養われた泥臭さや度胸も、事業を推進する力に

学生時代に学んだことで、役立っていることは?

小林
環境や資源に関する科学的・法政策的な専門知識は、もちろん現在の仕事に役立っています。他にも、博士課程で培った研究スキルが活かせていると思います。私は論理的というよりは直感的に動くタイプで、人とコミュニケーションを図りながら進めるのが好きです。しかし、博士課程での研究を通じて、周囲に納得してもらえるように情報を整理し筋道を立てて説明するといったスキルを養えたと思っています。また、泥臭く地道に知見を集め、新たな示唆を得ることの意義も学生時代に学べました。
中塚
仕事である以上、内容の入れ替わりがあり、社会全体のトレンドの影響もあるもの。ある程度ジェネラルなスキルが求められる一方、高い専門性を求められる仕事もあり、一つの分野を深く掘り下げた博士課程の経験が直接活用できる仕事もあります。また、博士課程で経験する「研究(=課題)テーマの設定、仮説の提示、検証から論文化」の流れはシンクタンクにも通じる部分があり、そのスキルは日々の業務で活かされています。
櫻木
私も、「動向調査、テーマ設定、わかりやすいレポーティング、講演、論文化」など、研究で求められる総合的な力が全て活用できています。顧客への説明やコンサルティングはもちろんのこと、共同研究の経験は、チーム運営の面でも役立っています。
中塚
研究はうまく行かない場面も多いため、研究者には「度胸」が重要なスキルだと思っています。博士課程ではいろいろな人と研究をする機会があり、見ず知らずの人といきなり議論するときに臆していては進まないので、度胸がつく。私は国際会議などの機会に、ノーベル賞を受賞した先生に質問したこともあります。物理にはそういう土壌があるんですね。すごく頑固な人もいるし、思い切って質問する度胸が身につくのではないでしょうか。建設的な質問ですよ、議論を持ちかけると言いますか(笑)。そんな貴重な経験が役に立っていると思います。
櫻木
私も出会ったばかりの人であっても、会話や仕事をすることにまったく臆さないです。仕事において、アカデミアの先生方と共同研究などをする際、こちらが科学に対し真摯な姿勢で対応していれば、私の専門とは異なる分野の先生も敬意をもって接してくださる印象を持っています。新しい分野を開拓する際には、自身が非専門家であることを受け止め、謙虚な気持ちを持ちしっかりと勉強した上でその道の有識者とコラボレーションできれば、ゴールへ向けて前進できると思います。このような考え方や姿勢は、博士課程や大学勤務時代に新規の共同研究を自由にやらせてもらえた経験に基づくように思います。大学院の指導教員や、当時の職場および、お付き合いいただいた共同研究先の方々には感謝しかありません。

05
熱意や粘り強さで、やり抜く力が、博士にはきっとある

博士課程の就学者・出身者にアドバイスやメッセージを。

櫻木
研究にて最先端へ挑む際に求められた総合的な力は、企業でエンジニアとマネジメントのどちらを行うにも役立つはずです。MRAは皆さんの興味に応えられる会社だと思いますので、面談などの際にはご自身の興味や熱意をしっかりお伝えいただきアピールしていただきたいです。純粋な研究活動ができるアカデミアと営利目的で戦略的に動かなければならない企業では、大きなギャップがあるとは思います。しかし、自身の知見を活かし社会を良くしていく気概があれば、シンクタンクで行いたい仕事も具体化していけるはずです。これは、博士課程でのプロポーザル作成やプレゼンの経験があれば、難なくこなせるものだと思います。
中塚
ポストドクターやアカデミアと、企業とのどちらへ進むかで迷うと思うんですね。アカデミアは、研究に100%のリソースを注げる。一方、後者は自前のリソースの範囲で研究するため、その深さは限られる場合がある。その制約の中でお客様が満足される成果を出すことが1つの面白みといえます。シンクタンクで扱う課題は幅広いため、好奇心をもって探求するのが好きなら、この業界に向いているのではないでしょうか。
小林
そうですね、お客様に対して成果をお納めする点が、シンクタンクがアカデミア等と違うところかと思います。その中でもMRAは官公庁の業務も多いことから、より公益性の高い仕事に携われる魅力があります。これは、博士号を持つ多くの方たちが興味を惹かれるポイントかと思います。博士課程に進もうという決断力と行動力、そして博士課程を修了あるいは修了を目指そうという完遂力は、民間シンクタンクで活躍する際のアドバンテージになる気がします。お二人は、どんな人に入社してほしいと思われますか。
櫻木
私は、「この仕事に熱意をもって取り組める」と、腹を決めて来てくれる人を歓迎したいです。それが博士号を持ち、何かしら確かな能力を身につけた方なら、MRAによりマッチするのではないでしょうか。
中塚
博士号を取られた人って、粘り強い思考力があると思うんです。シンクタンクでの仕事では、粘り強く説得する場面が割と多いんですよね。私はそこに強みがある人に、ぜひMRAへ来ていただきたい。博士号が活きる機会は多くあるので、就職先として心配せずに検討いただければと思います。
小林
私も、「やり抜く」という気概を持ち、色々な人との連携を苦にしない方に入社いただけると嬉しいです。MRAであれば、業務を通じて、大学や企業の研究者と接点ができることも多く、学会発表や論文投稿のチャンスもあります。ぜひ、民間シンクタンクにも目を向けていただき、当社にエントリーしていただければ幸いです。

その他博士課程出身社員の声② | 博士課程の就学者・出身者へのアドバイス

学位は皆さんの専門性と、知的好奇心の高さを証明するパスポートです。それをもって、皆さんはどこにでも行けます。長い間大学にいたからこそ、大学に残ることが半ば当たり前、と思われているかもしれませんが(私もかつてそうでした)、皆さんのバイタリティー、クリエイティビティは、アカデミア以外でも高い価値を発揮します。様々な道を検討いただく際、MRAも是非選択肢に入れていただければ、非常に嬉しく思います。