MRI Research Associates
サステナビリティ事業部 
環境・エネルギーチーム
PROJECT STORY05
地方公共団体が“その気”になる
温暖化対策支援を実行せよ
地球温暖化対策の重要性が、世界的に高まっている。
日本も数値目標を掲げ、国、地方公共団体、事業者及び国民がそれぞれの達成に向けた役割を担って取り組みを推進する必要がある。
地域における取り組みを進めるためには、地方公共団体の役割が重要である。
そこで、地方公共団体の取り組みを支援するためのプロジェクトが進められている。
池田 陽平

サステナビリティ事業部
環境・エネルギーチーム
チームリーダー
2007年入社
理学系研究科 地球惑星科学専攻 修了

中高では運動部ではなかったが体育会系に憧れがあり、大学ではヨット部に入部。現在も週末は千葉県の稲毛ヨットハーバーで活動し、レースに参加することもある。

Yohei Ikeda
安西 晴香

サステナビリティ事業部
環境・エネルギーチーム
2014年入社
都市教養学部 都市教養学科 都市政策コース 卒

中高ではバトントワリング、大学ではストリートダンスに熱中する。今も地元の友人と踊ることがあり、音楽フェスを選ぶときも踊れる曲の有無が基準になっている。

Haruka Anzai

01
プロジェクトの背景

地方公共団体の温暖化対策を支援

近年、洪水や豪雨、異常気象など、国内外で自然災害のニュースが増えているのではないか。そのたびに「環境保護」や「地球温暖化」というキーワードが脳裏をよぎる。これらの問題に取り組むことの重要性は誰もが認識しているところだが、その対策が効果を発揮するためには、国だけでなく、事業者や国民それぞれが主体的に問題意識をもって取り組むことが重要になってくる。それは地方公共団体も同様であり、各地方公共団体では「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づいて、その区域の温室効果ガスの排出抑制などを推進するための総合的な計画として「地方公共団体実行計画(区域施策編)」を策定することとされている。

池田
「各地方公共団体では、様々な施策が実施されています。例えば、近年注目度が上がっている再生可能エネルギーの導入促進や、省エネの促進、都市環境の整備・改善などを通じた温室効果ガス排出抑制施策などがあります。中には、「SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)」(※)の取り組みの一つとして、先進的な温暖化対策を目標に掲げる地方公共団体も出てきています。しかし一方で、地方公共団体によって取り組み姿勢に温度差があるのも事実です。ただし、その原因は、やる気のあるなしといったものではなく、財源や人手不足、温暖化対策に関する専門知識の不足などにあると、環境省の調査で明らかになっています」
※「SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)」:国連加盟193カ国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標。「貧困をなくす」「安全な水とトイレを世界中に」「気候変動に具体的な対策を」など、17の大きな目標と、それらを達成するための169の具体的なターゲットで構成されている。
安西
「温室効果ガス排出削減のための施策を立案するには、まず区域内の温室効果ガス排出量を詳しく把握することが前提になります。しかし、その算出方法は難しく、作業量も多いのが現実です。例えば、温室効果ガスというと二酸化炭素を思い浮かべると思いますが、算定対象となるのは二酸化炭素だけでなく、メタンや一酸化二窒素、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素など7種類もあり、それぞれについて算出していかなければなりません。しかも、多くの地方公共団体は、温暖化対策のために専任の人財を配置するほどの人的余裕はありません。他の業務と兼務しているのが実情で、温暖化対策に割ける時間は限られてしまっています」
池田
「このような状況を鑑みて、環境省は地方公共団体の取り組みの支援に力をいれています。私たちMRAも2014年より、そのプロジェクトに参画し、地域内での温室効果ガス排出量の算定支援や各種施策の策定・管理を支援するためのツール開発、計画策定のためのマニュアル作成などを通じて、地方公共団体の温暖化対策を後押ししています」

02
MRAの取り組み

単なる手順書ではなく、実践ノウハウにこだわる

日本の地球温暖化対策は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づいて策定された「地球温暖化対策計画」にそって進められている。そのため、この計画が見直されれば、地方公共団体の施策にも影響が出てくることになる。

池田
「2015年のCOP21パリ協定(※)で、日本は2030年度に温室効果ガス総排出量を2013年比で26%減らすという約束を表明しました。これに伴い地球温暖化対策計画も見直されたことで、2016年に地方公共団体実行計画を策定するためのマニュアルをつくり直し、2017年には、新たなマニュアルに基づいたツールの開発と地方公共団体支援事業を行いました」
※「COP21パリ協定」:COPは気候変動枠組条約締結国会議(Conference of Parties)の略。2015年、第21回目の会議がパリで開催され、採択された協定。
安西
「マンパワー不足、専門知識不足を課題にあげる地方公共団体が多いため、マニュアルは単なる手順書ではなく、可能な限り実行的な内容にする必要があります。そのため、『何をするのか』にとどまらず、『どうすればできるのか』というところまで踏み込んで解説することを心掛けました。例えば、計画策定を推進するための体制づくりについて、環境政策の優先度の低さやリーダーシップの不在、施設をつくる部門と管理する部門、事務局間の連携不足といった、ありがちな課題を示した上で、課題解決のポイントを示したりしています」
池田
「地方公共団体の規模や条件に応じて温室効果ガス排出量や対象範囲、目標の設定方法が変わってくるため、どこまで団体ごとの多様性に対応したものにできるかも苦労したポイントです」
安西
「例えば、区域の温室効果ガス排出量の対象は、工場や事務所、家庭、自動車といった一般的な対象に加えて、発電所や鉄道、廃棄物処理や代替フロンなどの排出など多岐に渡りますが、どこまでを対象にすべきかは地方公共団体の規模によっても変わります。また、目標設定も、工場が多い地域なのか、住宅地が多い地域なのかといった地域の条件によることになります」
池田
「こういった課題については、環境省と協議を重ねるだけでなく、学識経験者や地方公共団体職員からなる有識者会議を開催して、そこで出された議論や意見をフィードバックしたり、専門的な内容については専門家にインタビューを行ったりもしています」
安西
「また、計画策定を行う地方公共団体職員の負担を軽減するという目的から、『積上法による排出量算定支援ツール』『「区域施策編」目標設定・進捗管理支援ツール』などのツールを開発しました。どなたでも使えるようにMicrosoft Excelでつくるという制約があるため、その中でどれだけ使いやすいツールに仕上げるか検討を重ねました。Excelは汎用的で使いやすいアプリケーションですが、それゆえに『こちらが想定した通りにユーザーに使っていただくこと』が難しくもあります。そのあたりのバランスには特に注意しました」

地域のコベネフィット実現のために

地方公共団体支援事業というのは、どのようなことを行うのか。

池田
「マニュアルやツールづくりを通じて先進的な取り組みを行っている地方公共団体の事例を数多く集めたことで、当社にも知見が蓄積しています。これを活かして、積極的に計画を策定・実施したいと考える地方公共団体に対して、コンサルティングや調査支援を行っています。例えば、該当地域で優先すべき地球温暖化対策を検討したり、市町村の取り組みを支援したい県に対してその方法を一緒に考えたりといった支援を行いました」
安西
「地方公共団体にとって地球温暖化対策の実施には、様々な問題が絡んできます。例えば、温室効果ガス排出の抑制施策にも積極的に取り組みたいが、地域経済のために工場を誘致しようとすると、温室効果ガスの排出量が増えてしまうなど、こちらを立てればあちらが立たずという状況が生まれやすいのが現実です」
池田
「地域の地球温暖化対策は、それ単独で実施すればいいという課題ではなく、地域活性化、人口減少、産業振興、コスト削減、防災、健康など、地域が抱える様々な課題解決(=コベネフィット)と両立できるものでなければなりません。コベネフィットを実現できると思えればこそ、地方公共団体も積極的に取り組もうとするはずだからです。これはSDGsの理念にも合致します。計画の策定・実施を支援するMRAとしては、この点を無視するわけにはいきません。しかし、これらは同時解決が非常に難しい課題であるため、先進事例となる地方公共団体や学識経験者などへのインタビューや調査には腰を据えて取り組みました。そこから得たノウハウをマニュアルやツールづくりに活用するだけでなく、コンサルティングにも展開することで、課題を抱える地方公共団体を少しでも多く支援できればと考えています」

03
プロジェクトの成果

業務負担を軽減した情報ツールの開発で、温暖化対策へ貢献

今回のプロジェクトを通じて、成し遂げられたこと、変わったことには、どのようなものがあるのか。

池田
「私たちが作成したマニュアルやツールは、『使われて、なんぼ』のものです。そのため、使いやすさ、分かりやすさには徹底的にこだわりました。マニュアルの中でも触れていますが、環境政策の担当部署だけでは、地方公共団体の温暖化対策は成立しません。必ず設備担当や財務担当などの他部署の協力をあおぐ場面が出てきます。そのとき、他部署の人にも理解してもらえるよう説明するには、マニュアル自体が専門家でなくても理解できる内容になっている必要があります。その点は実現できているという自負があります」
安西
「ツールも煩雑な算出ロジックが整理されたものになっているため、必要な数字や情報を入力していくだけで温室効果ガス排出量の算定ができます。また、算定結果は、グラフなどを使って見やすくビジュアル化する機能もついているので、他部署などへの説明資料としてそのまま活用できるようになっています。地方公共団体の担当職員がプレゼン用に説明資料をつくっていたことを思えば、かなりの業務負担軽減につながっているはずです」
池田
「マニュアルやツールは、一つひとつを見れば小さなサポートかもしれません。でも、こういった小さなことを積み重ねていくことが地球温暖化対策の推進を加速させることになるはず。そう信じて、これからもMRAとしてできる支援を継続していきたいと思っています」