MRI Research Associates
公共政策第二部
PROJECT STORY
自動車資源のリサイクルを通して
持続可能な社会の実現を目指す
持続可能な社会の実現のため、資源をできる限り再利用する
循環経済の構築・発展が求められている。
しかし、リサイクルの過程においても温室効果ガスなどが排出されるため、
それらの数値を把握し、削減するための取り組みが重要だ。
小林 和樹

2020年入社
生物システム応用科学府
食料エネルギーシステム科学専攻 修了

幼少期の総合学習をきっかけに自然環境との共生に興味を持ち、大学院では未利用資源の活用に向けた環境化学と環境政策について研究。政策の現場に近く、専門性も求められるシンクタンクを志して入社し、現在まで一貫して資源循環分野の業務に従事。ランニングや海外サッカーの動向を追うのが好きで、最近は2人の子供と一緒に過ごす時間が何よりの楽しみになっている。

Kazuki Kobayashi
岡部 紘樹

2022年入社
工学系研究科都市工学専攻 修了

幼少期から環境問題に興味を持ち、中学時代の震災復興ボランティアの経験をもとに環境科学等複合分野から脱炭素・地方創生への貢献を志し、大学・大学院では都市工学を専攻。大学院では、地域における脱炭素、エネルギー、地域産業のシナリオを研究。専攻した内容を生かしつつ、政策に携わることを魅力に思い、MRAに入社。現在は学生時代からの趣味である合唱を続けている。

Hiroki Okabe

01
事業を取り巻く状況・現状

より適切に、環境に優しくリサイクルするために

2005年に「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(通称:「自動車リサイクル法」)が本格施行された。この法律は、使用済自動車を適正にリサイクル・処分するために、リサイクルにおいての所有者、関連事業者、自動車メーカー・輸入業者の役割を定めたものだ。
MRIグループは、これまで継続して自動車リサイクルに取り組んできた。

どのようなプロジェクト(以下、PJ)に取り組んできたのか。

小林
「資源循環政策チームでは、環境省や経済産業省等の官公庁を主なお客様とし、親会社であるMRIと密に連携しながら、国内リサイクル法制度の施行状況評価や施策促進に向けた調査検討を実施しています。最近では、こうした官公庁向けPJの受注実績を活かし、同様の社会課題の解決に向けて取り組む業界団体や事業会社のご支援にも業務を広げています。今回同席している岡部は環境省を顧客としたPJを担当し、社員Aは事業会社を顧客としたPJを担当しました。私は事業リーダーとして、両PJを統括しました」
岡部
「環境省のPJでは、5年に1回、自動車リサイクル法が適切に運用されているかを見直す機会があります。リサイクル法制度に基づく使用済自動車の回収・再資源化の実態を把握し対応策を検討することで、国・事業者の自動車リサイクルの取り組み促進に貢献することが大きな目的です」

「使用済自動車のリサイクルは、『自動車所有者』『引取業者』『フロン類回収業者』『解体業者』『破砕業者』『自動車メーカー・輸入業者』等の各事業者が役割を分担しています。廃棄物の減量と再生資源・再生部品の十分な利用を目標にリサイクルが進んできましたが、ステークホルダーが多く、資源循環に向けてどこを重点においた施策が必要とされているかを検討する必要がありました」
PJメンバー
「私は事業会社を顧客としたPJに携わりました。内容としては、一般家庭へのハイブリッド車や電気自動車の普及が進む中で、ガソリン車と比較してどのくらい環境に優しいかを定量的に把握したいというニーズに応えるべく、自動車の製造から廃棄・リサイクルまでの環境影響を調査したものです」

02
MRAの取り組み

環境影響を数値で可視化し、削減のために検討する

顧客は違えど、どちらのPJも自動車リサイクルの環境影響を調査するという点は共通している。
環境負荷を低減するために、具体的にどのような取り組みを行ったのだろうか。

まずは環境省のPJについて聞きたい。

岡部
「今回のPJでは、どのような取り組みを行えば温室効果ガスの排出量を減らせるかといった結論を得るのが目的でしたが、調査開始時点では排出量のデータが得られていない状況でした。温室効果ガスの排出量を減らそうにも、現状の排出量がわからなかったのです。そのため、まずは実態調査として事業者へのアンケートやヒアリング調査を行い、現状の取り組み状況を聞き取りました。そこで得られたデータを基に、今後どの工程でどのような取り組みを行えばどのくらい排出量が削減できるのかといった試算・推計を行い、取り組みの排出量削減効果を一覧化することで、働きかけるべき事業者を分析。最終的には算定結果に関する検討会を運営し、有識者の方々から意見をいただき、今後の政策について検討しました」

PJ推進において苦労した点は。

岡部
「温室効果ガス排出量の試算では、事業者へのヒアリングで参考となるデータを得られたとしても、データ自体は機微情報のため無加工で公表するわけにはいきません。そのため、集めたデータを用いた適切な仮定の設定に苦労しました。公開可能な範囲や算定の仮定を、データを提供していただいた事業者に確認し、調整したことで、最終的に、どのような取り組みをするとどのように排出量が変化するのかといった試算を公表するに至りました」

「また、排出量削減の取り組みの一覧作成においては、読み手にとってわかりやすいフォーマットとすることに苦労しました。社内のPJメンバーや顧客と相談を重ねて、必要となる情報を整理し、わかりやすい示し方にできたと思います」

一方、事業会社のPJでは、どのように課題解決に取り組んだのか。

PJメンバー
「自動車の製造から廃棄・リサイクルまでの各工程における温室効果ガス排出量や大気汚染物質発生量等を定量化し、数種類の車種で比較しました。PJメンバーは、ライフサイクルアセスメント(以下、LCA)という手法やリサイクル関連の専門知識があるメンバーに加え、語学やデータ分析など、様々なスキルを持った5人程度のメンバーで協力し、PJを遂行しました」

語学力は調査のどのような場面で必要なのか。

PJメンバー
「このPJは、主に一般に公表されているデータを活用して比較検討を行いました。公表されているデータの中には海外の研究機関が出しているものもありますので、データの取得方法や詳細な条件を含め、中身を正しく理解するために語学力のあるメンバーが必要でした。自動車に詳しいメンバーと自動車の専門用語を時折確認しながら、収集した情報の内容を精査して報告書に整理できました」

03
成果と展望

得られた結果と経験を生かし、環境課題解決へ前進

温室効果ガスなどの環境影響をデータ化し、排出量削減のためにPJを遂行したMRA。
今回のPJにおける成果は、今後どのように繋がっていくのか。

PJを通して得られた成果や学びは。

岡部
「これまでみんなが課題と思っていたけれど、把握できていなかった自動車リサイクルにおける温室効果ガス排出量の試算を行った結果、解体事業者や破砕事業者などの取り組みが重要だとわかり、排出量削減方策の検討に繋がりました。今回の試算結果が、国の政策判断に用いられたことも成果のひとつです」
小林
「やはり、継続的なご支援につながっているということは、評価していただけているということだと思います。また、国の大きな会議である『自動車リサイクル合同会議』の資料の一部に我々の試算結果が載っているのですが、こうして使っていただけることも評価の証だと思います」
岡部
「ただ、これで自動車リサイクルの課題が全て解決したわけではありません。今回得られた結論を踏まえ、次は何を調査すれば良いのか、最終的にどのような結論を得られると仮定し調査を進めていけば良いのかを、お客様とご相談・ご提案しながらPJを進めていきます」
PJメンバー
「事業会社のPJも今回の案件で終わりというわけではなく、お客様のニーズを常に把握し、継続的に支援を行っています。また、技術の進展や社会情勢の変化により、同じ電気自動車でも環境影響は変わってくる可能性があります。将来の技術開発動向や政策動向に応じた環境影響評価が必要になってくると思います」

「私は入社2年目からこのPJに携わっており、リサイクルやLCAに関する知見を一から勉強しながら取り組みました。初めて触れる分野だったこともあり、顧客やPJメンバーの話す内容が難しく、最初は議論についていくことは大変でしたが、その分学びも多かったです。PJメンバーにはちょっとした悩みにも相談に乗っていただき、調査中、資料作成、顧客打合せ等、様々な場面で助けていただきました。今後は、今回のPJで得た自動車関連の知見を活かすことはもちろんですが、LCAやリサイクルという観点から、様々な産業における環境分野の課題解決に繋がる仕事ができたら良いと思っています。また、語学、ヒアリング、資料作成等のスキルも向上させて、様々なPJに生かしたいです」

学生の皆さんに伝えたいことは。

小林
「物を使っているといつかは必ず廃棄しますが、どうすればもう一度使えるか、問題なく処理するためにどうしたら良いかまでは普段の生活ではあまり気にする機会は多くないかと思います。でも、間違いなく重要な問題です。環境影響を加味した経済活動の重要性がますます高まる中で、LCAを用いた分析評価等により、国の政策立案や事業会社の戦略検討の支援に携われることは、シンクタンク業務の醍醐味だと思っています。今回は自動車リサイクルのPJを紹介しましたが、MRAでは資源循環に関する自動車以外のテーマ(小型電子機器、太陽光パネル、バイオマス等)も取り扱っています。環境・資源の視える化や循環経済の構築・発展に興味をお持ちの方には良い職場だと思いますので、検討していただけると嬉しいです」