MRI Research Associates
社会システム事業部
PROJECT STORY02
交通需要の予測事業
社会システム事業部は、幹線交通(長距離輸送機関)を対象に将来の需要予測に取り組んできた。
交通の需要予測は、なぜ必要なのか?
鉄道と航空の需要予測のスペシャリストに話を聞いた。
金子 哲也

社会システム事業部
事業リーダー
2001年入社
工学研究科 土木工学専攻 修了

週末の朝は散歩の後、娘と公園でテニスを楽しむ。家で料理をすることもある。「自分が食べたい物を作るだけなのですが、子供たちは美味しいと言って食べてくれます」

Tetsuya Kaneko
菊池 光貴

社会システム事業部
2012年入社
工学研究科 建築社会基盤系専攻 修了

競走馬の産出と長大な桜並木で知られる自然豊かな町で育った。音楽はロックが大好き。「人混みは苦手ですが、会場限定販売の音源を求めてライブにも行きます」

Kohki Kikuchi

01
プロジェクトの背景

日本の交通政策のベースになる需要予測

新幹線の延伸、鉄道新線の建設、空港の建設や滑走路の増設など、日本の交通インフラは、日々、発展を続けている。鉄道や空港を整備する前には、完成した場合、利用者がどのくらいいるのか、すなわち需要はどのくらいあるのか、国、自治体、民間事業者によって調査が行われる。交通インフラは、需要予測の結果をもとに、社会的に必要とされ、事業としても採算が確保できることを確認したうえで整備されているのだ。
社会システム事業部の金子哲也と菊池光貴は、それぞれ入社以降、交通需要の予測に取り組んできた。

MRAの交通需要予測とともに歩んできた金子

金子は2001年入社のベテラン社員、2012年入社の菊池は中堅社員。二人は需要予測に関わるプロジェクトを担当している。金子が入社した当時、MRAの交通需要予測事業は、立ち上がったばかりだった。

金子
「もともとは、三菱総合研究所(以下、略称MRI)が、国や鉄道事業者から業務を請け負っていたのです。そこにMRAは、MRIを支援する形で参入しました。しかし、参入してみたものの、当時のMRAには、土木計画や交通計画に詳しい人財がおらず、専門知識を持っている人を求めていたようです。ちょうどその時、大学で土木計画学や交通工学を勉強していた私が、たまたま、MRAに応募してきた。それで採用されたと聞いています」

金子は、当時あったエンジニアリングソリューション部に配属になり、交通需要予測の担当になった。社内の先輩社員に学生時代から需要予測を学んでいた人はいなかったため、大学で交通工学を学んでいた金子は、新入社員ながら活躍を期待された。
需要予測は初期段階に行われるため、予測した輸送機関や施設の供用が数年後、ときには十数年後ということもある。自分の手がけた案件が開業したと聞いたときには、「やっとできたかと思い、感慨深いものがある」と彼は言う。「それが、この仕事の醍醐味」とも言う。
MRAは、航空需要予測も手がけている。

金子
「私が入社した頃は、日本中に新しい空港を造っている時代でした。近年、国内の空港は、ほぼできあがりました。現在、国や自治体は建設した空港をいかにうまく使っていくかということにも力を入れるようになってきています」

一方、各地の鉄道会社は、空港アクセス線の充足に取り組んでいる。

菊池
「航空の旅客需要がどのくらい増えるかによって、空港アクセス線の需要も変わります。例えば、最近、インバウンドという言葉をよく耳にするようになりましたが、訪日外国人旅行者の増減は、空港アクセス線の需要予測に大きな影響を及ぼします。需要予測は、国内だけでなく世界中のトレンドとも密接に関係する興味深い仕事です」

02
プロジェクトの意義

なぜ、交通の需要予測が必要なのか?

そもそも国や民間事業者にとって、交通需要予測は、なぜ重要なのだろうか?

菊池
「鉄道や空港の整備には莫大な投資が必要であり、その投資を上回る社会的な便益が投資を判断する基準となります。その社会的な便益を算出するためには需要を算出することが必要であり、そのために、私たちは需要予測を行います」
金子
「例えば、航空なら、国は、将来の空港の需要がどうなるかという予測値を見て、現在の空港の規模では容量が不足していると判断すると、新しい空港や滑走路を整備する検討を始めます。私たちは、そうした将来の日本の航空需要全体の予測も行いますし、個別の空港や滑走路を建設するにあたっての需要予測も行います」

交通インフラの整備は、国にとっては税金の使途を決める重要な決定であり、民間事業者にとっては経営に直結する重要な決定となる。そのため、今も国は、需要予測手法の改善を進めており、MRIとともにMRAも協力してきた。そうして培ったノウハウを活用し、国だけでなく、民間事業者の経営判断を支援してきた。

菊池
「民間企業のお客様の多くは、こういったものを造りたい、造ればきっと業績が伸びるはずだというアイデアを予め持っています。実際に造ったらどうなるのだろうという段階になると、客観的な判断指標を求め、私たちに仕事の依頼がきます。そして、事業の採算性が見込めると判断されれば整備が進められるのです」

まさに、企業成長の命運を握る仕事と言える。

03
求められる専門性

統計学の手法を応用して予測モデルを構築

二人は、どのような方法で、交通需要を予測しているのだろうか。

菊池
「重回帰モデルやロジットモデルを使って、交通量の変化や人々の輸送機関の選択行動を数式で表現し、それらを組み合わせて将来にわたる航空や鉄道の利用者を推計しています」

統計学の解析手法を駆使してつくられた予測モデルだが、予測を実施してみると「結果が、自分の感覚に合わないことがある」と、二人は口をそろえる。

金子
「私たちの仕事では、数値に対する感覚はとても大事です。需要予測は人の動きを表しているので、パッと見ておかしいとか、一般常識に照らし合わせておかしいと感じるときは、その要因を探る必要があります。膨大なデータを一つひとつ見直して、要因を探していくのは、職人のように根気のいる作業です」

04
未来展望

都市交通や環境問題の解決にも展開

これまで、MRAの交通需要予測事業は、幹線鉄道である鉄道と航空を主な対象にしてきた。しかし、需要予測を必要としているのは、鉄道と航空の事業者に限らない。

金子
「対象が変わっても基本的な考え方は同じなので、交通需要の予測は、ほかの輸送機関にも応用が利きます。私は、都市交通のような距離の短い公共交通機関の需要予測にチャレンジしてみたいですね」
菊池
「MRAが積み上げてきた需要予測の技術とノウハウを使えば、交通以外の分野、例えば、二酸化炭素の排出量の予測や削減量の評価といった、環境問題などにも役立てることができると考えています」

近年、都市交通や環境問題に関するトレンドとして、電気自動車の普及やカーシェアリングの台頭、自動運転技術の実用化など、様々な話題が注目を浴びている。

菊池
「近い将来、誰でも利用できる移動手段を指してきた公共交通機関という概念自体が、大きく変わっていくことが予想されます。現在の需要予測モデルも、世の中のトレンドにアジャストさせなければならなくなり、さらなる工夫が求められるようになるでしょう。そうしたニーズに応えて新たな技術を考えることもやりがいのひとつです」

交通需要予測は、夢のある、可能性の広がる事業のようだ。

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