MRI Research Associates
サステナビリティ事業部 
地域創生チーム
PROJECT STORY03
清冽な水環境の創出に向け、
持続可能な生活排水処理の在り方を模索
日頃意識することなく出している生活排水だが、処理されることなく河川や湖沼、
海へ流されているものが少なくないという事実は、あまり知られていない。
この現状を改善し、清冽な水環境を創出するには、浄化槽をはじめとした生活排水処理設備の整備が不可欠である。
MRAは、行政に対する支援を通じ、持続可能な生活排水処理の在り方を模索している。
三堀 純

サステナビリティ事業部
地域創生チーム
チームリーダー
2009年入社
農学府 物質循環環境科学専攻 修了

高校、大学と山岳部に所属。アラスカの山が好きで、2013年には1カ月間の休暇を取得し、米国最高峰のデナリ山(6,190m)へ登ったことも。普段は子供と遊ぶことが多く、キャンプへ行ったりとアウトドアを楽しんでいる。

Jun Mitsuhori
迫 裕之

サステナビリティ事業部
地域創生チーム
2017年入社
政治学研究科 公共経営専攻 修了

ソチ五輪のフィギュアスケートを見て好きになり、大学院の頃から自身も始める。コーチについてもらい、毎週滑っているとか。1回転半ジャンプはマスターしている。

Hiroyuki Sako

01
プロジェクトの背景

1,000万人以上の生活排水が未処理で放流

日々、当たり前のように使っている“水”。しかし、あまり知られていない問題として、2018年3月末で、約1,200万人以上の生活排水——台所や風呂などから出る汚水が、未処理のまま河川に放流されている。

三堀
「生活排水は、川や湖沼、海の水質汚濁の原因の一つになっています。国際連合が「持続可能な開発目標6(SDG6):水と衛生」として掲げた、『すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する』の中のターゲット6.3において、『2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成』するとあるように、国際社会においても、未処理汚水は大きな課題と認識されています。日本でも、地方自治体が実施する汚水処理インフラの新規整備を、2026年頃までを目処に実施することが求められているなど、早急な対策が必要とされているのです」
「汚水処理をほぼ完全に行うためには、未普及人口の半分以上を占める人が使用している単独処理浄化槽を、合併処理浄化槽へ転換することが重要になります。単独処理浄化槽とは、生活排水のうちトイレから出る排水を処理する設備ですが、これを使用する世帯の台所やお風呂から出る生活排水は、未処理のまま放流されてしまいます。合併処理浄化槽は台所やお風呂から出る生活排水も浄化処理できる施設です」

生活排水処理というと下水道がまず思い浮かぶが、浄化槽はどのような場所で使われているのか。

三堀
「地方部で多く使われています。下水道は全国津々浦々まで敷かれているわけではありません。人口がまばらになるほど、下水道のような集合処理方法は生活排水1㎥を処理するのにかかる費用が高くなります。そのような地域では、分散処理のほうが経済的であり、浄化槽が使用されています」
「これまでも、人口密度の高い都市部は下水道、まばらな地方部は合併処理浄化槽で対応したほうが効率的とされてきました。当社は、設置費用やランニングコスト、人口密度などをもとに精緻な経営分析を行って、定量的に浄化槽の経済性を評価しています。一方で、浄化槽整備の課題点としてクローズアップされているのが、既設の単独処理浄化槽の合併処理浄化槽への切り替えです」
三堀
「このような現状を打開し、合併処理浄化槽への転換を促進するため、環境省では、地域の汚水処理施設に関わる現状分析と施策検討支援に注力しています。MRAは2014年よりこの課題解決に向けた様々なソリューションを提供しています」

02
MRAの取り組み/苦労とその克服

確かな分析力に基づく、政策立案から実施までのトータルソリューション

合併処理浄化槽の整備には課題が山積している。その中において、MRAは具体的にどのようなソリューションを提供しているのか。

三堀
「当社はデータハンドリングを強みとする会社です。この分野においても強みを活かし、現状把握、効果分析、経営分析、将来予測、といったソリューションを提供しています。特に、単独処理浄化槽が将来的にどの程度残存するのか、といった将来推計などは、当社の試算結果が環境省主催の公開検討会で発表され、新聞に掲載されるなどの反響もあったものです」
「そのような将来分析は精度が重要ですが、これにあたっては分析に用いるデータの精度が高いことが求められます。当社は、この精緻なデータ収集においても強みを有しています。具体的には、環境省が国内の全市町村を対象とした悉皆(しっかい)調査(調査対象をすべて調査すること)を行っていますが、この調査で用いるデータチェックツールの設計なども当社が行っています」

政策立案だけでなく、実施の段階の支援は何を行っているのか。

三堀
「私たちが直接支援するのは都道府県や市町村ですが、その先には浄化槽を利用している住民の方々がいます。そのため、立案した政策の効果を十分に発揮するには、住民に対するアプローチについても、目配りが必要です。しかし、単独処理浄化槽の撤去や合併浄化槽の導入には、当然ながら費用負担が発生しますし、関係各所への届出といった手間もかかります。住民の方にしてみれば、日常生活に支障が出ていないため、そこまでして切り替える必要性を感じづらいという実情があります。
当社では、このような課題に先進的に取り組む事例について、市町村にアンケート調査やヒアリング調査を実施し、事例集などとしてまとめています。これは環境省のウェブサイトなどに掲載され、国内の自治体担当者が有効な取り組みを把握できるようになっています。事業者と連携して、単独処理浄化槽使用世帯への戸別訪問を行っている静岡県富士市の例も、その一つとして紹介しています」
「富士市では、市内のNPO浄化槽に関わる住民向けの講座を開催するなどしているのですが、浄化槽に対するさらなる認知度向上に有効な住民の方向けのコンテンツや、アンケート設計へのアドバイスがほしいというご要望をいただいたので、その支援を行いました。住民の方向けのコンテンツは当社で企画、作成し、実際に住民の方に見ていただき、生の声を聴くことができました。そういった声を集めて分析を繰り返しながら、より良いコンテンツや手法の紹介を全国に届けられればと思っています」

03
プロジェクトの成果/今後の展望

浄化槽を起点に、地域と世界の明日を作る

このプロジェクトによって、都道府県や市町村からどのような反応が出ているのか。今後、どのような展開を考えているのか。

三堀
「例えば、富士市生活排水対策課の川西涼太様からは、『打ち合わせを通じて、こちらの意図をくみ取っていただき、大変満足のいく報告書となりました。ありがとうございました』と、お礼の言葉をいただいています。都道府県や市町村の浄化槽整備に携わる現場の方々に貢献できたことは、素直に嬉しく感じる点です。
掲載されている事例集についての問合せや、当社の試算結果が新聞で大きく取り上げられるなど、インパクトのある情報発信ができているのではないかとも思っています」
「私は大学院まで社会福祉を専攻しており、浄化槽の知見を吸収したのは入社以降ですが、知れば知るほど面白い分野だと身をもって実感しています。悉皆調査は非常にマンパワーを要するものでもありますが、その分、細かな情報まで把握でき、分析設計を考える上でもそのような情報が極めて重要になってきます。このようなミクロ・マクロな情報把握が非常に重要であると実感しています。私どもが構築したデータが、浄化槽整備の促進に貢献するデータになればと思っています」
三堀
「今後は、国内課題への対応だけでなく海外における排水処理の課題解決にも貢献していくことを展望しています。
まず国内課題に関しては、整備がある程度収束した将来を見越した制度検討を模索していきます。具体的には、設置された浄化槽の運用や更新、安全性評価などです。
海外における排水処理の課題解決は、まず東南アジア諸国での支援を行っていきます。今年度からSDGsのターゲット6.3の達成に向けた、AWaP(アジア汚水管理パートナーシップ)という枠組みが設立されました。2018年度に、当社と三菱総研はこの事務局運営を担いました。
最後になりますが、私は大学時代に環境科学を専攻し、MRAに入社後も幸いなことに、環境やエネルギー問題をテーマとしたリサーチ業務に携わってきました。そして経験を積んだ現在、自らの手で事業を開拓し、営業からプロジェクトの遂行、そして納品までを一貫して担当する仕事の醍醐味を味わえています。専門性を極めることで社会貢献の幅も一段と広がっており、今後のキャリア志向ともマッチするなど、非常に面白いポジションにいると感じています」
2018年9月、全国浄化槽行政担当者会議(環境省主催)にて講演する三堀

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