MRI Research Associates
サステナビリティ事業部 
脱炭素・エネルギーチーム
PROJECT STORY03
温室効果ガスの排出量を突き止めろ
算出する事業者にも寄り添う制度運用
菅首相がG20サミットで、温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を表明した。
その達成には、あらゆる事業活動における温室効果ガス排出量の把握と、削減への取り組みが必須だ。
事業者が、国内における排出量を報告する制度が、あらためて注目されている。
瀧本 恭子

サステナビリティ事業部
脱炭素・エネルギーチーム
2019年入社
情報学部 経営情報学科 卒

2010年から三菱総合研究所で、派遣社員として本件に従事。その後、転属、正社員登用を経て、現在本プロジェクトのリーダーへ。この自身の経験から「やる気が人生を変える」がモットーに。プライベートでは英語習得に挑戦し、現在は国際交流を楽しむまでに。

Kyoko Takimoto
安西 晴香

サステナビリティ事業部
脱炭素・エネルギーチーム
2014年入社
都市教養学部 都市政策コース 卒

中学・高校ではバトントワリング、大学時代はストリートダンスを楽しむ日々。さらに、社会に出てからは国内・国外を問わず、ダンスフェスに行くのが趣味に。最近は音楽配信サイトでの良曲発掘や、フェスの配信動画の視聴に勤しんでいる。

Haruka Anzai

01
プロジェクトの背景

どこで、どれくらい出ているか分からなければ、
排出削減への取り組み方も分からない

国内の企業等が、その事業活動を通じて直接的・間接的に排出する温室効果ガスの削減に、自ら取り組むことが重要だ。そこで、企業が自ら行う取り組みへの気運醸成を目的に、自らの排出量を把握し報告するよう、平成17年の「地球温暖化対策の推進に関する法律」(通称:温対法)改正の際、新たに『温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度』が導入された。

この制度では、毎年約14,000の事業者から報告される排出量を国が集計・公表しており、この情報は自治体の施策やESG投資※の情報として活用されることが期待される。この制度の運用全般に関わっているのが瀧本・安西の2名である。

※従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資。

どのような調査が行われるのか。

瀧本
「この制度は、企業や自治体が、自らの事業活動によってどれくらい温室効果ガスを排出しているのかを、年1回国へ報告するという制度です。温室効果ガスの排出抑制を義務付けるものではありません。自らが温室効果ガスをどれだけ排出したかを把握することで、温暖化対策への具体的な取り組みに向け、企業等を促そうというものです。よく、『ダイエットする前に、まず自分たちの体重を測りましょう』という表現をしています」
安西
「義務化はされていないものの、報告によって集まる情報は、大変重要なものです。例えば、自治体はその地域でどれだけ温室効果ガスの排出量があるかを把握し、その上でどう削減するか、政策づくり等に利用していす。また最近注目されるESG投資においては、より積極的に環境対策へ取り組む企業を見つけ出す指針となります」
瀧本
「何より、この制度で公表する集計結果は、日本国内の事業活動等に伴う温室効果ガス排出量として貴重なデータです。海外では気候変動に対する意識は高く、特にヨーロッパでは国としての温暖化対策が大変進んでいます。『温暖化対策に取組む企業が注目される』といった流れは確かにあり、世界に目を向けている日本企業は、これを無視できない状況になっています」
安西
「そして大企業だけでなく、そこと取引をしている中小企業でも、大企業から環境への取り組み要請が来るといった状況になりつつあります。つまり、『サプライチェーン』です。ある会社が商品を造る上で、それに必要な部品や材料を造る会社がいたり、完成した商品を流通させる業者がいたり、最後は消費されゴミとして焼却されるまで、それぞれの事業活動で温室効果ガスは発生しています。このため、事業活動全体的な視点で温室効果ガスを削減する取り組みが重視されるわけです」

つまり、各々で排出される温室効果ガスの排出量を算出していただき、それをプロジェクトで集計しているということか。

瀧本
「そうです。そして、排出量の算定方法や制度で使用するシステムの使用方法に関する問合せ対応なども担っています。問合せは、報告対象となる事業者のほかにも、制度に関連する各省庁や関連制度の機関、さらには温暖化対策に関心を持つ一般の方々などからもあり、様々なご質問やご相談に対応しています」

02
制度の実態/MRAの役割

排出量の算出作業を、正確にするため、改善するために

温室効果ガスを削減するといっても、一般の人たちにとっては「二酸化炭素を出さない」といったイメージしか、すぐには浮かばないかもしれない。まして算出するとは、何をどの程度明らかにすればいいことなのだろう。

瀧本
「温室効果ガスには、主に7種類あります。事業者は、ガスの種類ごとに年間の排出量を算出し、報告することになっています。主要な温室効果ガスである二酸化炭素は大きく2つに分けられ、化石燃料由来から発生するものは『エネルギー起源CO2』、化石燃料由来以外の例えば廃棄物の焼却などから発生するものは『非エネルギー起源CO2』とされます。ちなみに、プラスチックは化石由来のものですが、それをゴミとして燃やせば非エネルギー起源CO2という形で報告されます。そして実は、化石燃料を燃やすと、メタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)など他の温室効果ガスも発生します。そこで、例えば『何をどれくらい焼却すると、何のガスがどれくらい出ます』といったことを定めた係数によって排出量を算出していただいています」
安西
「この算出方法はノウハウとして他の制度でも活用されており、私が関わる別の制度でも、事業者の温室効果ガス排出量を算定するパートで、この制度の算定ロジックを採用しています。他の制度の根幹にもなっているわけです。こういった、プロジェクト間におけるノウハウの相互活用といったメリットは、官公庁業務の受注実績が豊富な三菱総合研究所(以下、略称MRI)グループならではの強みだと思います」

「事業者が算定したデータが、各所管省庁を経由してMRAに届きます。ただ、そのデータには昨年度と比べて桁が跳ね上がっているなど、追加の確認が必要な箇所が含まれています。それを私たちが経験値から見つけ出して、各所管省庁へ再チェックをお願いしています」
瀧本
「そうすると、『違うという根拠は何なの?』といった問い合わせが来て、その対応にも追われることとなります。時には、算定方法を詳細に説明することもあります」

どのくらいの規模で集計を行っているのか。

安西
「およそ、14,000の事業者を対象としています。14,000というのは、ある基準を超える量を排出している事業者を対象とした数になります。全業種・全業界をほぼ網羅してはいますが、基準以下の事業者となると、もっとたくさんおられます。このため、日本全体を見ようとしたら、さらに対象を広げていく必要があります」
瀧本
「国内の排出量としては、制度で公表する集計結果の他に、日本国の排出量として国が国際機関に報告しているものもあります。これはMRAではなく別の機関で調査・集計が行われています。国際機関に提出するものは事業活動に伴う排出量ではなく、例えば日本に入ってきた化石燃料(輸入量)をベースに、それが消費されることでどれくらいの排出量になるかといった視点によるものです」

調査業務の、一番大変なところは。

安西
「この制度を運用していく中で、見えてきた課題をどう解決するかを検討するという点でしょうか。例えば、集計結果の利用者には、自治体も多くおられます。本制度は国の制度ですが、それとは別に、事業者が自身の排出量やエネルギー使用量を自治体へ報告する制度を設けている自治体も数多くおられます。また、両制度の提出様式や算定方法が異なるケースも多々あります。つまり、両制度の対象となっている事業者にとっては、年に2度の算定と報告の対応が必要になり、負担が増えていることは目下の課題の一つです」
瀧本
「制度を運用する中で見えてくる気候変動に関する課題は長期的・短期的な視野での検討が必要で、大変難しい部分です。ただ、そのような課題に限らず、新しい科学技術などが出てきた場合にも、その事柄がどのようなもので、どう向き合い整理していくべきか、私たちから環境省に提案していくことができます。今後、この制度がどのような方向に進むのか、ある程度見据えながら物事を決めていかなければいけません。具体的にどうしたらいいのかを、常に考えていくことが求められている状況にあると認識しています」

03
プロジェクトの成果と展望

継続することで蓄積するノウハウ、そして新たな試みも

MRAは、この制度がスタートした2006年から運用に関わっている。毎年、入札が行われるものの、継続して受注できている理由はどこにあるのか。そして、今後については。

瀧本
「この制度は、今後も長く続くものと考えています。先ほどお話したような課題は、年々積み重なっていくでしょうし、新しい問題にも対応しなければならない。温暖化対策自体が大きく転換していくことも予想されます。だから大きく捉えれば、『地球温暖化への対策自体が必要なくなる』その時まで、ゴールは無いでしょう。ゴールに向かう途中の成果としては、クライアントである省庁の良きアドバイザーやサポーターとして評価いただくことだと考えています。感謝される場面も年々増えており、それがシンクタンカーとして日々勤しむための糧となっています」

そういった、クライアントからの信頼が重要だと。

安西
「そうですね、毎年、入札によって受注可否が決定するため、来年も継続して業務を任せていただけるかは分かりません。ただ、継続性を持って、混乱なく制度を運用していくことはとても大切です。その意味で、運用事業者が変わると影響は大きいですし、私たちには蓄積してきたノウハウがあることはアドバンテージだと思います」

「そして、この気候変動対策に関する幅広い分野での調査・研究から得た経験やノウハウをさらに活かしたいと考えています。制度運用に限らず、温暖化対策を講じるあらゆる分野に対して、今後もコンサルティングを継続していきたいです」
瀧本
「今、国ではデジタル化の流れをさらに推し進めています。MRAでは調査結果をデータ化し、その上で新しい事業分野の開拓と、新しいものを生み出すための『DX(デジタルトランスフォーメーション)※』に着目しています。定期的に人が集まり、新たな事業戦略についてブレストしているところです。今後、生まれてくる温暖化に関する手法や技術に対しても関心を怠ることなく、日々成長していきたいと考えています」

※デジタル技術の活用によって、ビジネスモデルや業務環境、組織などを変革し続け、新たな価値を提供していくこと。

Formation