社会解析ソリューション部
PROJECT STORY
燃え広がる炎に"科学"で挑む。
林野火災対策を前進させた、理工学解析チームの挑戦
林野火災対策を前進させた、理工学解析チームの挑戦
大規模な林野火災が国内外で頻発する中、消火活動のあり方があらためて問われている。
社会解析ソリューション部・理工学解析チームは、
林野火災延焼シミュレータ(FARSITE※1)に独自の消火効果モデル※2を組み合わせ、
消火活動の有効性を定量的に可視化した。
本プロジェクトは、過去の実績を踏まえた発展的な取り組みでもある。
技術リーダーの北内と若手解析者の吉原が語る。
社会解析ソリューション部・理工学解析チームは、
林野火災延焼シミュレータ(FARSITE※1)に独自の消火効果モデル※2を組み合わせ、
消火活動の有効性を定量的に可視化した。
本プロジェクトは、過去の実績を踏まえた発展的な取り組みでもある。
技術リーダーの北内と若手解析者の吉原が語る。
※1: Finney, Mark A. 1998. FARSITE: Fire Area Simulator-model development and evaluation .
Res. Pap. RMRS-RP-4, Revised 2004, Ogden, UT: U.S. Department of Agriculture, Forest Service, Rocky Mountain Research Station. 47 p.
※2: 北内英章, 村山哲也, 宮隼輔, 2024. 実応用を想定した林野火災シミュレータFARSITEにおける空中消火パラメタの設定方法. 2024年度 日本火災学会 研究発表会 概要集. p.211.
Res. Pap. RMRS-RP-4, Revised 2004, Ogden, UT: U.S. Department of Agriculture, Forest Service, Rocky Mountain Research Station. 47 p.
※2: 北内英章, 村山哲也, 宮隼輔, 2024. 実応用を想定した林野火災シミュレータFARSITEにおける空中消火パラメタの設定方法. 2024年度 日本火災学会 研究発表会 概要集. p.211.
北内 英章
理工学解析チーム
2019年中途入社
理学研究科 数理解析専攻 博士(理学)
地球科学・物理学分野を専門とし、数理解析と数値シミュレーション研究に長年携わってきた研究者。入社後は、森林火災など自然災害分野の解析業務を主導し、理工学的視点から社会課題に向き合っている。根拠と現象の解釈を重視した分析が信条。アラスカ大学に約4年半海外赴任、南極昭和基地に夏隊として3回赴任した経験が活かされている。休日は、地域の子どもたちとボランティア活動を楽しんでいる。
Hideaki Kitauchi
吉原 正隆
理工学解析チーム
2024年入社
理工学研究科・理工学専攻 修了
大学時代は、航空機の空力性能をテーマに数値計算を用いた研究に取り組む。入社後は、自然現象を対象とした解析業務に従事。趣味はスキーで、バックフリップなどの技にも挑戦し、失敗を繰り返しながら体得してきた。試行錯誤を重ね、精度を高めていく姿勢が、日々の業務にも活きている。
Masataka Yoshihara
01
プロジェクトの背景
「さすがMRA」 ――信頼の積み重ねから生まれた挑戦
消火活動の効果を事前に把握し、被害拡大を抑えるための判断材料に変えるためには、消火活動を"数値化"する必然性がある。その要請から検証は始まった。
北内
「今回が最初の案件ではありません。過去に、総務省消防庁からの依頼の下、三菱総合研究所と共にとある都道府県の林野火災に関する検討を実施しました。その際、実際の消火活動のモデル化を弊社で考案し実装したところ、『さすがMRAだ』と非常に高く評価していただきました。その反応があったからこそ、単なる検証ではなく、継続的に使える枠組みが求められていると感じました」
吉原
「延焼を予測するシミュレータ(FARSITE)は存在しますが、実際の消火活動をどう取り扱うかは難しい。実際、火災が起きてから現場に行って実測することはほぼ不可能です。だからこそ、正解が用意されていない分、手法ごとの有効性を比較しながら、どうやって合理的な数値を作るかが問われると感じました。そこが、このプロジェクトの一番の難しさであり、同時に面白さでもあったと思います」
北内
「消火活動は、林野火災が起きてから対応するのは勿論のこと、どの方法が、どの条件で、どの程度効果を発揮するのかを事前に示せることが、現場と行政の意思決定に直結します」
02
MRAの取り組み
「根拠のない数値を出すな」 ――基礎と向き合い、組み立て直すこと
延焼はある程度予測できても、消火は予測できない。そこに踏み込んだ理工学解析チームは、短期間での高精度化を、理工学的知見と基礎応用力で貫いた。
北内
「学問でも仕事でも、やはり基礎が一番大事だと思っています。新しい手法を使う前に、物理や数理の前提が正しく理解できているか。そこを飛ばすと、結局使えないモデルになります。FARSITEには延焼の仕組みが組み込まれていますが、実際の消火活動は含まれていません。どこまでが既存のモデルで、どこからが自分たちで開発すべきモデルなのかを一つひとつ整理し、実際の消火活動を消火剤の散布範囲とその延焼阻止効果に"数値化"して落とし込みました」
吉原
「正直、北内リーダーへ最初に提出した案はほとんど通りませんでした。ただ、その理由を一つずつ理解していく過程で、根拠の積み上げ方を学ぶことができたと思っています。なかでも特に難しかったのは、消火効果のある散布条件の設定です。先行研究の画像解析から散布条件を推計しました。約2か月という、比較的短期間のプロジェクトでしたが、何度も条件を変え、結果を確認しながらモデルを調整していきました」
北内
「若手は勿論、チームメンバーに対しては、『なぜそうなるのか』『その論理の根拠は何か』を徹底的に確認・ディスカッションします。我々が扱っているのは政策判断・立案に使われる重要な案件なので、曖昧な説明はできません。基礎を理解してこそ、少しずつ形が見えてくる。そのプロセス自体は、とても面白い。私自身は、仕事の中でもそうした感覚を大事にしています。チームメンバーは勿論、後進にもそれを伝えていきたいですね」
03
プロジェクトの成果/今後の展望
「社会課題と、基礎から向き合う」 ―― 大きな責任を伴う数字を扱うからこそ
"どの方法が、どの条件で、どの程度効果を発揮するのか"。技術で未来の林野火災対策を変えていく。比較の軸を与えることで、次の実務判断につながる。
北内
「様々な消火活動のシナリオについて、『どの方法が、どの条件で、どの程度効果を発揮するのか』を"数値化"して示せたことが、今回の大きな成果です。事前に様々な消火活動のシナリオについて、その効果を定量的に把握できることは、火災現場と行政の判断スピードとその精度に直結します」
吉原
「今回の大きな学びは、直接的なデータが不足していても、『根拠となる数値は自分たちで工夫して作り出せる』という点です。文献調査・画像解析・既存の解析条件など、プロキシ情報から整合的なデータセットを構築していく力は、今後どの解析課題にも応用できると感じています」
北内
「今回のプロジェクトも含め、主に官公庁の様々な案件の解析・分析業務に携わらせていただいていますが、どの案件も国・地方自治体の施策と現場での対応に直結するものばかりです。つまり、自分たちの分析結果が、国・地方自治体の政策意思決定の一部になる。だからこそ、短期間でも妥協はできない。研究として面白いだけでは足りなくて、実際に使われ、社会に役立つことが重要だと考えています」
最後に、これからこの業界を目指す学生へのメッセージをもらった。
北内
「社会課題と真正面から向き合えるのが、MRAの仕事です。自由度が高い分、やろうと思えばどこまでも深掘りできます。しかしそのためには、好奇心と探究心を持ち、『おかしい』を人任せにしないで自分で調べ切る姿勢が不可欠です。基礎を疎かにせず深く考え抜く人ほど、この仕事をきっと楽しむことができると思います」
吉原
「物理・数学・科学的思考のような基礎学力は、すべての分析の土台になります。『なぜ?』をそのままにせず、納得できる根拠まで追求できる人に向いている仕事だと思います。理工系でそのプロセスが好きな人にはとても良い環境で、挑戦の機会ややりがいのある環境だと思います」
Formation