MRI Research Associates
公共政策第一部
PROJECT STORY
医療・介護・福祉のさらなる発展のために。
公的データの安全性を守り、利活用を促進
厚生労働省では、各種政策に関わる医療用の業務データを収集・蓄積している。
データはそれぞれ匿名化済みの共通のIDを持っており、
患者(利用者)ごとに各データを連結することが可能。
これにより分野横断的に、各種サービスの併用状況や患者(利用者)の状況を分析できる。
これらデータが一部の政策利用に留まっていた状況の中、データを有効に活用することを意図して
2011年から、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB; National Database of Health Insurance Claims。以下、NDB)で、
研究者等へのデータの貸与(第三者提供)が開始された。
他のデータベースもNDBに続いて、有効活用を進めるために第三者提供が開始されている。
原田 剛志

2013年入社
工学研究科 社会基盤工学専攻 修了

大学・大学院では、地震・豪雨時の交通をテーマにして道路網の災害時の機能とその便益評価を研究。趣味はコーヒーとハーブティー。二児の対応に追われる日々を過ごしている。政策支援を通じて、データの利活用促進に貢献したい。

Tsuyoshi Harada
岡本 凱晴

2021年入社
経済学研究科 経済学専攻 修了

埼玉県出身。大学院では、人と組織の最適なマッチング方法について経済学実験を用いた研究を行った。MRAのインターンシップに参加し、様々なデータに触れられるMRAの業務に魅力を感じて入社。「仕事も遊びも全力」をモットーに、休日はゴルフをはじめ様々な趣味に打ち込んでいる。

Yoshiharu Okamoto
出井 めぐみ

2021年入社
生活科学部 人間生活学科 卒業

大学時代は生活科学部で、人の生活を取り巻く心理・社会・文化等を横断的に学んだ。趣味は旅行で、現地の食事や文化に触れることが楽しみの一つ。

Megumi Idei

01
事業を取り巻く状況・現状

データに対する深い理解力が生きる業務

NDBに続いて、匿名介護保険等関連情報データベース(以下、介護DB)、匿名障害福祉等関連情報・匿名障害児福祉等関連情報データベース(以下、障害福祉DB)、匿名感染症関連情報データベース(iDB; Infectious Diseases Surveillance Database。以下、iDB)などの公的データベースにおいて、研究者等への第三者提供が行われている。

MRAは、2018年から介護DBの第三者提供業務に携わり、その後、障害福祉DB、iDBの第三者提供業務にも携わっている。

MRAが担うことになった経緯は。

原田
「2018年に、介護DBの第三者提供を制度化するにあたって公募が行われました。その際、介護保険制度の発足当初から政策支援を多数受注するなど、介護DBに対する知見を有していた三菱総合研究所(以下、略称MRI)が落札しました。MRAは、MRIから第三者提供の準備業務を受託し、2018年度の半ばから第三者提供の受付窓口業務を開始しています」
岡本
「介護DBの第三者提供の運用で培った経験を活かし、2023年度にiDB第三者提供の準備業務を受注しました。その後、一旦は他社が第三者提供の受付窓口業務を担いましたが、2025年4月より第三者提供開始2年目のiDBの第三者提供業務を受注し、受付窓口を担当しています。また、障害福祉DBでは、2023年度より第三者提供の準備業務の再委託を受け、2025年12月より第三者提供受付を開始しています。DBごとにMRAの業務範囲は異なるものの、共通する業務としては、第三者提供の準備業務、受付窓口業務を担当しています」
出井
「第三者提供開始前の準備業務では、第三者提供のガイドライン案の作成、データ関係の説明資料案の作成、専門委員会の資料案の作成、申出書類案の作成の他、事務処理フローの整理等を行います。第三者提供開始後の受付窓口業務では、厚生労働省のHPに記載されている事務局窓口の連絡先に、データ利用を希望する申出者から事前相談のメールが届くため、事前相談から、申出書類の受付、承諾後の諸手続きの支援、データ提供、成果物の公表前確認といった利用終了までの一連の対応を実施しています」
原田
「MRAは、国からの委託を受けて政策検討を行うシンクタンクの機能と、データの中身を理解し、そのデータの仕様に基づいて集計分析、諸課題の検討を行うスキルを有しています。また、アンケート調査の事務局業務・検討会ロジ支援の実績も多数あります。当プロジェクトでも、他業務で培った事務局運用・ロジ支援のノウハウを活かしつつ、政策を意識し、データも理解し、実際の制度運用を担っています」

02
MRAの取り組み

厳格な運用と利活用の促進を両立

続々と国が保有するDBの第三者提供は開始しているものの、比較的新しく第三者提供が開始したiDBや障害福祉DB、第三者提供の準備段階にあるDBもあり、データの利活用はまだ限定的な状況にある。
各データベースは個人単位のデータであるため、データの利活用を促進する上では、個人特定が行われないよう安全性を守ることも重要だ。

利活用の課題に対して、MRAではどのように取り組んでいるのか。

原田
「第三者提供制度の運用を通じて、安全な形でのデータ利活用を促進しています。利活用方法としては、『政策立案・政策評価への活用』『研究者等への第三者提供を通じた有効活用』『オープンデータ等による情報公開を通じた活用』の3つのアプローチがあります。『政策立案・政策評価への活用』では、介護保険を担当している厚生労働省の老健局が、介護報酬の見直しや介護保険サービスの方針を、データを基に検討することや、介護保険に関する政策を打った際、その政策が実際にどの程度効果があったのか、利用者数や介護保険料の変動を見て事後評価するために活用されています」
出井
「『研究者等への第三者提供を通じた有効活用』では、主に大学の研究機関や民間企業に提供を行っています。まずは事前相談を受け付け、専門委員会という提供申出の審査会で個別審査に諮ることができるよう、書類を整えていただくための書類確認をします。第三者提供を行うためには、公益性のある研究であることが重要なので、研究内容が公共の福祉増進に資するものかどうかという審査を行います。そのうえでデータを提供することで、医療や介護、感染症、障害福祉等に関する研究を進めていただきます」
岡本
「審査へ向けては、メールでの綿密なやり取りを繰り返して研究計画などをブラッシュアップします。ガイドラインとの整合性や、申出内容の明確化、様式間の整合性を持たせる等のブラッシュアップさせたものを最終的には事務局より個別審査を実施する委員会に諮るという流れです」
出井
「データ提供後は、申出案件の進捗状況を把握し、必要に応じて公表物の準備状況を確認します。公表前には内容を確認し、申出内容と整合しているか、公表内容から個人が特定されないか等を確認します。最終的に、公表の実績を報告いただいて、提供したデータの削除をいただき、その報告を受けてデータの利用が完了となります」
原田
「『オープンデータ等による情報公開を通じた活用』では、個人特定性について問題のないデータを、広く一般の方に向けて公開しています。例えば介護DBなら「要介護認定者が毎年何人ほど新規に認定されているか」や、「要介護認定者がどのような状態なのか」といった内容を公開し、データの活用を促進しています」
出井
「当プロジェクトは、政策への反映・政策による誘導を通じてさらなる福祉の増進に資すると考えており、社会的意義の大きい取り組みだと思います」

当プロジェクトを進めるうえで必要なスキルとは。

原田
「申出者から提出される研究計画には、研究結果の公表イメージが掲載されているのですが、その公表イメージを見た際に、記載されている研究計画でアウトプットが問題なく出せそうかも可能な限りチェックします。データに対する知識・経験に基づく業務であるため、MRAの強みであるデータへの理解力が生かされます」
岡本
「申出内容を審査する委員の構成としては研究者の先生が中心ですが、医師会の方や法律の専門家等、データ分析の専門ではない委員にも参画いただいています。そうした方は研究の専門用語などには詳しくないので、公平に判断していただくために、研究内容をわかりやすく説明するスキルが重要になってくると思います」

03
成果と展望

データ提供を通じて社会課題解決に貢献

公的データが具体的にどう利活用されているのか、MRAがどのようにして利活用を促進しているのかについて知ることができた。
第三者提供業務は今後も続いていくが、現時点で、チームとして、個人として、どのような成果を得られているのか。

得られた成果や、プロジェクトのやりがいは。

原田
「第三者提供が開始されていないDBにおいては、第三者提供の運用が予定通り開始し、研究利用が開始したことが成果の一つです。介護DBの第三者提供準備段階では、介護DBの集計仕様作成業務で培ってきた介護DBの知見と、介護保険分野の政策支援をする過程で蓄積した業務知識を活かして、早期に第三者提供の開始を行うことができました。この介護DBでの経験・ノウハウは、他のDBの支援の際にも活かせており、iDBや障害福祉DB、また今後提供開始予定の予防接種DBの第三者提供準備業務について、円滑に支援できています」
出井
「介護DBの第三者提供は、これまで多くの研究者によって研究利用されています。介護費用や高齢者の健康等をテーマとした研究の分析等に介護DBデータを使用されることもあり、高齢化社会問題等の注目度の高い社会課題解決への貢献にも間接的に関与できていることはとてもやりがいを感じます」
岡本
「DBの第三者提供は公共に資する研究に対する支援ですので、将来的に国のためになるような研究を支援できることは非常にやりがいを感じます。今後、日本のDB利活用はどんどん進歩していくと思いますので、今の早い段階でDBに関係する仕事に携わっているという点も、大きなモチベーションになっています」

今後の展望は。

原田
「今後は、各DBについて引き続き参画し、データの理解を深め、それらのデータを委託元である厚生労働省の政策支援に活かしていきたいと考えています。また、第三者提供業務を通じて安全な形でのデータ利活用を進め、様々な研究成果が公表されることを支え、それらの公表されたエビデンスが政策立案・評価時に科学的根拠として活用されることで、データ利活用の循環が生まれるよう貢献したいです」