連載企画:EU・中国・米国の廃車の回収・リサイクルの実態(全3回) ~【第2弾】中国の政策動向~
- エム・アール・アイリサーチアソシエイツ株式会社
- 公共政策第二部 肖瑶、小林和樹
本コラムでは、全3回にわたり、EU・中国・米国の廃車の回収・リサイクルの実態を紹介しています。第2弾では、中国の政策動向について紹介します。
本調査は一部を除き2026年6月頃までに確認できた各国・地域の政府公開資料、研究機関の先行研究、報道機関のニュースリリース等をもとに整理しており、公開時点の最新状況を反映できていない可能性があることにご留意ください。
本コラムのポイント
- 中国では、制度整備と買い替え促進策を背景に、認定回収解体企業を通じた正規回収が急速に拡大しています。一方で、非正規処理も残っており、正規回収への誘導が引き続き課題となっています。
- 回収・解体は地域の事業者が担う一方、破砕・高度選別・材料再生は大手企業が担うなど、地域分散型の回収網と統合型の資源循環拠点が併存しています。
- 鉄スクラップ回収が産業の基盤である中、動力電池、非鉄金属、アルミニウム、プラスチックなどを対象に、トレーサビリティや高付加価値利用に向けた資源循環の高度化が進められています。
1. 中国における廃車回収・解体産業の現状
①廃車市場の拡大と車種構成
中国では、自動車保有台数の増加に加え、買い替え補助金と正規回収を連動させる政策を背景として、廃車1の正規回収量が急増しています。2024年の正規回収量は約787万台で、前年比71%増となりました。2商務部(日本の経済産業省に相当する行政機関)の統計及び見込みでは、2025年は約1,147万台であり、2021年の約195万台から4年間で約6倍に拡大する計算です。3ただし、これは正規ルートで回収された車両の規模であり、中国全体で発生した廃車の総数を示すものではありません。4
内燃機関車と新エネルギー車(New Energy Vehicle:NEV、主にBEV、PHEV、燃料電池車等)の内訳について、統計データは出ていませんが公開情報や推計値に基づくと、2025年末時点の自動車保有台数に占めるNEVの割合は12%であり、2025年の廃棄NEVは約36万台と推計され、廃車全体の約3%にとどまるとされています。5このため、現時点の廃車回収・解体市場は、依然として内燃機関車を中心に形成されていると考えられます。一方、新車市場ではNEVの販売比率が大きく上昇しており、「内燃機関車中心の現在の廃車市場」と「急速にNEV化する将来の廃車予備軍」が併存しています。今後、現在販売されているNEV、特に電動車が使用段階を終えるにつれて、車体の解体だけでなく、動力電池の安全な取り外し、状態評価、二次利用、金属回収が廃車リサイクル産業の重要な領域になると見込まれます。6
* NEV廃棄台数は公式統計ではなく、報道に基づく参考推計値。2025年時点で約36万台、全体廃車の約3%と推計。
**2025年は予測値。前年比45.8%増。正規ルートの廃棄台数であることに留意。
出所:商務部、中汽数据有限公司等よりエム・アール・アイ リサーチアソシエイツ作成
図1 中国の廃車台数及び新エネルギー車廃棄台数の推移(2021年~2025年)
②回収・解体制度の標準化
中国では、廃車市場の拡大に対応して、回収解体企業の認定、車両の回収証明、主要部品の管理、危険物除去、解体・破砕工程等に関する制度の整備が進められています。2019年に施行された「廃車回収管理弁法」は、認定を受けた回収解体企業を正規処理の入口に位置付けるとともに、従来制限されていた主要部品の再製造・再利用を一定条件の下で可能としました。2026年4月時点で、全国の認定回収解体企業は約1,976社とされています。さらに、2019年の解体技術規範、2022年の汚染防止技術規範、2024年の再利用部品取り外し技術規範等により、事業者が備えるべき施設・設備、環境管理、標準的な処理工程が具体化されています。7,8
制度上は、車両をそのまま破砕するのではなく、危険物、有価部品、再使用可能部品等を事前に取り外し、その後に車体を圧縮・破砕して素材を選別する流れが基本です。トレーサビリティの確保度合いは品目によって異なり、動力電池と再製造向け主要部品は、個体情報や流通先を国家管理システムへ登録します。一方、鉄、非鉄金属、プラスチック等の回収材は、主に事業者の台帳と重量・ロット単位の取引で管理され、全国で個体単位に追跡する仕組みはありません。
表1 廃車の回収規制に関する近年の政策動向
* 「弁法」「規定」は法的拘束力を持つ行政規制であり、回収解体企業の資格、5大アッセンブリー部品(①エンジン、②トランスミッション、③ステアリングギア、④フレーム又は車体、⑤前後車軸)管理等を規定する。一方、「国家標準」、「環境規範」は回収解体・環境管理の技術要求を定め、主に政策誘導・推奨レベルに留まっている。
注:各標準・規範の法的位置付けや強制性は文書ごとに異なる。特に、GB、GB/T、HJ等では適用形態が異なるため、本表では個別文書の規定に従う。
出所:国務院、工業情報化部、商務部、生態環境部等よりエム・アール・アイ リサーチアソシエイツ作成
③正規回収と非正規処理の併存
制度整備が進む一方、中国の廃車回収市場では正規ルートと非正規ルートが併存しています。認定回収解体企業は、環境・安全対策に必要な設備を備え、危険物除去、台帳管理、適正処理を行う必要があります。これに対し、非正規事業者は、環境対策に必要な設備投資や処理費を抑え、有価部品や金属を優先的に回収することで、正規事業者より高い買取価格を提示できる場合があります。非正規事業者には、所有者のもとへ出向いて車両を引き取り、移動や登録抹消に関する手続きを代行するものもあります。所有者にとっては、高い買取価格と手続負担の軽減が選択理由となり、正規事業者が車両の調達競争で不利になることがあります。民間調査によれば、2018年時点では全国の約7割の廃車が非正規ルートで処理されていたとされます。9この数値は制度改正前の状況を示す参考値であり、現在の非正規処理率を示すものではありません。2019年以降、主要部品の再利用解禁、認定要件の見直し、トレーサビリティ強化、買い替え補助との連動等により正規回収量は増加していますが、非正規処理が完全に解消されたわけではありません。10
2. 地域別に見た産業構造の特徴
中国では、廃車の回収・解体は認定回収解体企業を通じて行われるため、地域ごとに回収・解体拠点が形成されています。車両を廃車する際には、認定回収解体事業者が車両を受け入れて「廃棄自動車回収証明書」を発行し、公安機関交通管理部門が当該証明書に基づいて登録抹消を行います。こうした手続の下、車両は登録地又は所在地に近い認定回収解体企業へ引き渡される場合が多くみられ、各地域に回収・解体の入口が分散しています。11
①山東・湖南:地域分散型の回収・解体
山東省(華東・渤海沿岸)と湖南省(華中内陸)は、中国有数の鉄鋼・再生資源集積地であり、地域ごとに地場企業が廃車回収・解体を担う分散型の産業構造が特徴です。認定回収解体企業が各地域に配置され、中小規模の事業者が周辺地域の車両を回収・解体する分散型の構造がみられます。山東省では、2024年時点で認定回収解体企業が150社に達したと報じられています。地域の解体企業は、車両の受入れ、危険物除去、人手による部品取り・前処理、車体の圧縮等を担い、解体後の車体ガラや金属スクラップを、鉄スクラップ加工企業、破砕事業者、製鋼所等へ引き渡します。
②湖北:大手企業にみられる統合型資源循環モデル
湖北省(華中)は、中国有数の都市鉱山・資源循環産業の集積地であり、格林美股份有限公司(GEM Co., Ltd.)に代表される大手企業を中心に、廃車回収・解体から動力電池回収、素材再生までを一体的に担う統合型の産業構造が特徴です。電池回収のトレーサビリティ実証や都市鉱山に関する重点プロジェクトが進められ、大手企業が資源循環事業を展開する基盤が形成されてきました。代表例として、GEMは、廃車解体に加え、車体破砕・金属選別、動力電池回収、材料再生等を自社又はグループの事業として展開しています。地域に分散した回収・解体の入口と、大規模な選別・材料再生機能を企業ネットワークで連接する、統合型資源循環モデルの例と位置付けられます。12,13
このように、中国の回収・解体産業では、地域の事業者が車両の受入れ、危険物除去、部品取り、圧縮等を担う分散型の構造と、大手企業が破砕、高度選別、動力電池回収、材料再生等の下流工程を広域的に接続する統合型モデルが併存しています。両者は相互に排他的なものではなく、地域の回収・解体企業が確保した車両・部品・素材を、大規模な選別・再生拠点へつなぐ関係にあります。
3. 回収方法の実態
①廃車になるまでの車両流通
中国では、所有者が車両を手放す際、市場価値が残っている車両は、まず中古車として再流通します。中古車の流通経路には、独立系中古車事業者への売却、ディーラー下取り、個人間取引、オンライン査定・オークション等があります。公式統計はなく、経路別の構成を明確に把握することは困難ですが、2021年に公表された金融機関参考値では、中古車取引の約85%が中古車事業者経由、約8%がディーラー経由、約7%が個人間取引と整理されています。14中国では、地域の中古車事業者へ車両を持ち込み、査定後に直接売却する形態が、伝統的な流通チャネルとして大きな位置を占めています。
近年は、新車販売や買い替え補助と連動したディーラー下取りも拡大しています。オンラインオークションには、個人所有者が車両を登録し、中古車事業者が入札するC2B型と、保険会社、中古車事業者、リース会社、ディーラー等が保有する車両を事業者間で流通させるB2B型があります。C2B型は個人所有車の売却手段の一つであり、B2B型は再販可能な中古車に加え、事故車や価値の低い車両の売却にも利用されます。オークション事業者によっては、取引前の車両検査、オンライン入札、落札後の輸送、名義変更等の手続支援までを提供しています。
中古車としての再販価値が低い車両、事故車、故障車、車両検査制度の条件を満たさない車両は、認定回収解体企業へ引き渡されます。したがって、中国の廃車回収を理解するには、認定回収解体企業への搬入だけでなく、その前段階にある中古車取引、下取り、事故車オークション等を含めて捉える必要があります。15
*割合は2021年時点での目安。
出所:Roland Berger、平安銀行、中国自動車流通協会等よりエム・アール・アイ リサーチアソシエイツ作成
図2 廃車になるまでの商流
②正規解体される廃車の主な回収ルート
正規解体される廃車の回収ルートは、制度基準による廃車と、所有者・事業者の判断による廃車の二つに大別できます。EVについては、これらとは別の車両回収ルートが設けられているのではなく、認定回収解体企業で取り外された動力電池に、OEM・電池メーカー等による追加的な管理ルートが設けられています。車両本体を正規に廃車処理する場合は、いずれも認定回収解体企業へ集約されます。
A) 制度基準による廃車(公的ルート)
車両検査に合格できない車両や法定使用年限に達した営業車両等は、道路走行・営業継続ができなくなるため、制度上、強制的に廃車の対象となります。この場合、行政機関が車両を直接回収するわけではなく、所有者が認定回収解体企業へ持ち込むか、同企業へ引取りを依頼し、回収証明の発行と登録抹消を経て解体されます。このルートによる全国の回収件数は、公開統計からは確認できません。
B) 所有者・事業者の判断による廃車(民間ルート)
所有者、保険会社、中古車事業者等が、事故、故障、市場価値の低下等を理由に継続使用が難しいと判断し、認定回収解体企業へ引き渡す民間ルートも存在します。個人所有車は、ディーラー、修理工場、仲介事業者等を経由する場合と、認定回収解体企業へ直接申し込む場合があります。例として、GEMでは、提携先のデジタル回収プラットフォームを通じ、車両所有者からのオンライン申込み、出張引取り、抹消手続、残存価値分の返金、買替等に係る補助金の申請支援等を一体的に提供しています。16
法人が保有する事故車・価値の低い車両は、B2Bオークション等を通じ、修理・再販事業者、部品事業者、回収解体企業等へ売却される場合があります。特に保険事故車については、オークションが主要な処分・流通チャネルとなっており、民間推計では、2024年に事故車の約90%がオークションを通じて処分されたとされています。17
C)EV動力電池の管理(OEMルート)
EVの車両本体は、制度基準又は所有者・事業者の判断を通じて認定回収解体企業へ入り、解体企業が動力電池を安全に取り外してその情報を管理システムに登録します。取り外された電池は、OEMの拡大生産者責任の下で、電池メーカー、二次利用企業、再生利用企業等へ引き渡されます。したがって、一般の車両回収ルートに、電池に特化したトレーサビリティと責任が追加される構造です。廃車の発生理由や車両の引渡し経路は異なりますが、正規に廃車処理する場合は、認定回収解体企業への引渡しと、車両管理機関での登録抹消が同じタイミングで行われます。なお、車両の登録抹消、中古部品の流通、動力電池の回収・再生利用は、それぞれ異なる管理システムで扱われ、すべての情報が一つのシステムに統合されているわけではありません(部品別のトレーサビリティ管理システムは後述の「中古部品」を参照)。6
③車両の地域内回収と、解体後資源の広域輸送
中国の廃車物流は、車両を地域内で回収・解体し、加工後の資源を広域流通させる構造と理解できます。登録抹消と地域の認定回収解体企業による受入れを前提とするため、車両は登録地又は所在地の周辺で回収・解体される場合が多いとみられます。走行可能な車両は所有者が持ち込む場合があり、事故車や故障車等の走行不能車は、回収解体企業がレッカー車又は積載車で引き取ります。回収された車両は認定回収解体企業の保管場所へ搬入され、受入確認と一時保管を経て前処理・解体へ進みます。この保管場所が、地域内の車両集積地点として機能します。
解体後の鉄・非鉄金属等は、圧縮、剪断、破砕等によって輸送しやすい形状に加工され、鉄スクラップ加工企業、破砕事業者、製鋼所、非鉄金属の再生事業者等へ出荷されます。近距離ではトラック輸送が中心ですが、大量に集約された金属スクラップでは、鉄道や水運が利用される場合があります。大手特殊鋼・鉄鋼メーカーである南京鋼鉄は、長江沿いの埠頭や鉄道専用線を活用した水運・鉄道の物流網を整備しています。ただし、これは廃車由来スクラップ専用の物流ではなく、金属スクラップを含む原料物流の事例です。18
内燃機関車とEVでは、車両本体の回収・輸送方法に大きな違いは確認できません。違いが生じるのは認定回収解体企業への搬入後です。EVでは、動力電池が安全に取り外され、車体とは別に登録・保管された上で、二次利用又は再生利用の事業者へ輸送されます。
4. 解体・破砕工程の実態
①前処理・解体・破砕の標準工程
正規ルートでは、車両の受入れと情報確認の後、前処理、解体、破砕・選別の順に処理が進みます。前処理では、残存燃料、廃油、冷却液、冷媒、鉛蓄電池、エアバッグ、触媒等を取り外し、品目別に分別・保管します。解体工程では、再使用可能な部品、タイヤ・ホイール、ガラス、金属部品、大型プラスチック部品、5大アッセンブリー等を取り外します。その後、残った車体を圧縮又は剪断し、必要に応じて破砕・選別工程へ送ります。破砕後は、磁力、重量差、渦電流等を利用し、鉄、アルミニウム、銅、プラスチック等を段階的に分離します。EVも基本的な処理順序は内燃機関車と共通しますが、前処理段階で動力電池を安全に取り外し、車体とは別の管理・再生利用ルートへ引き渡す点が異なります。破砕工程の技術規範では、再利用可能な材料を分離・回収し、破砕残さを破砕物総重量の20%以下とすることが求められています。ただし、この基準は技術規範上の要求事項であり、全国の事業者における達成状況は確認できません。19
②回収解体企業と下流事業者の役割分担
認定回収解体企業には、事業規模に応じて1万~1万5,000平方メートル以上の敷地、車両保管区域、解体区域、危険物保管区域、圧縮機・剪断機等の設備が求められます。このため、一般的には同一敷地内で、車両の受入れ、一時保管、危険物除去、部品取り、車体の圧縮までが行われます。廃車決定後に複数の中継倉庫を経由させるというより、認定回収解体企業の保管場所が地域内の集積場所として機能します。
認定回収解体企業の取組範囲は、事業者の設備構成によって異なります。多くの地域事業者は、破砕設備を保有していないため、危険物除去、部品取り、車体解体、圧縮等までを担い、廃車ガラ又は圧縮スクラップを鉄スクラップ加工企業や破砕事業者へ引き渡します。一方で、大規模な破砕・選別設備を持つ事業者は、車体の破砕から鉄・非鉄金属等の選別までも自社又はグループ内で行います。破砕・選別後に回収された鉄・非鉄金属は、製鋼所、非鉄金属の再生・製錬事業者等へ供給します。
③統合型事業者による破砕・高度選別
GEMのような統合型事業者では、解体後の車体を圧縮・破砕し、重量差、磁力、渦電流、各種識別装置等を利用して、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、プラスチック等を段階的に選別しています。解体工程で取り外せなかった部品・素材を破砕後に分離し、製鋼・精錬事業者や材料リサイクル事業者へ供給する工程を、自社又はグループ内の事業として接続している点が特徴です。こうした設備はすべての認定回収解体企業が備えているものではなく、資本・設備を有する大手企業の処理モデルとして位置付けられます。
5. 廃車由来再生資源の実態
①危険物
中国では、廃車を解体する前に、残存燃料、廃油、冷却液、冷媒、鉛蓄電池等を取り外し、品目別に分別・一時保管することが求められます。廃油、鉛蓄電池、水銀含有部品、廃回路基板、廃触媒等は、種類に応じて危険廃棄物として管理されます。回収解体企業は、これらの一次分離、保管、台帳管理、専門処理事業者への引渡しを担い、最終的な無害化又は資源化は、対象品目の処理許可を持つ事業者が行います。危険廃棄物の移転では、品目と規制区分に応じた移転管理が必要となり、一般の金属スクラップとは異なる管理が行われます。
表2 危険廃棄物の管理対象と規制
*HW06(有機溶剤類)、HW08(廃油類)等は、「国家危険廃棄物名録」上の危険廃棄物分類コード
**EV車の動力電池は別途、「新エネルギー自動車用動力蓄電池回収利用トレーサビリティ管理暫定規定」により、国家管理システムへの登録や回収・再利用管理の対象
出所:エム・アール・アイリサーチアソシエイツ作成
②EV動力電池
EV動力電池は、一般的な危険物とは別に、国家管理システムを通じて回収・再生利用のトレーサビリティが強化されています。自動車メーカーはEPRの下で回収サービス網の構築と関係事業者との連携を担い、認定回収解体企業、電池メーカー、二次利用企業、再生利用企業等が、実際の取り外し、評価、再利用、材料回収を分担します。認定回収解体企業は、車両から電池を安全に取り外し、情報を登録した上で、二次利用企業又は再生利用企業へ引き渡します。
下流側では、二次利用・再生利用企業が、残存容量、劣化状態、安全性等を評価し、二次利用が可能な電池と、解体・製錬によりリチウム、ニッケル、コバルト、マンガン等を回収する電池に振り分けます。二次利用が可能な電池は、状態評価と再組立等を経て、定置用蓄電池や通信基地局のバックアップ電源等へ利用されます。二次利用・再生利用を行う企業は工業情報化部の業界規範条件に基づいて公告されており、2024年時点で148社が対象となっています。ただし、これは廃車由来電池だけを扱う企業数ではなく、回収電池の二次利用又は金属資源回収を行う総合利用企業の数です。20
*2次利用企業・再生利用企業は、工業情報化部の「新エネルギー自動車廃旧動力電池総合利用業界規範条件」に基づくホワイトリストで管理されている。2024年時点で、2次利用・再生利用を含む総合利用企業は累計148社が公告されている。対象は、回収電池の2次利用や金属資源回収を行う企業であり、自動車メーカー系(BYD)、電池メーカー系(CATL)、大手資源回収企業(GEM)等が含まれる。
出所:エム・アール・アイリサーチアソシエイツ作成
図3 EV電池の回収に係るステークホルダーとその役割
③中古部品
中国では、5大アッセンブリー(エンジン、トランスミッション、ステアリング機構、前後車軸、フレーム又は車体)について、再製造向け利用を認める制度と管理ルールが整備されています。回収解体企業は、対象部品の数量、型式、流通先等を台帳で管理し、全国自動車流通情報管理プラットフォームへ登録します。再製造向けに販売する部品は、標識ルールに基づいてコード化され、通常の中古部品と区分されます。5大アッセンブリーの管理に用いられる全国自動車流通情報管理プラットフォームは、EV動力電池を管理する国家管理システムとは別のシステムです(表3参照)。いずれも政府による監督を主目的とし、中古部品の在庫検索や売買を行う民間取引プラットフォームとは役割が異なります。21
表3 トレーサビリティに関する情報システム
*記載のURLはいずれも2026年7月30日閲覧。
**2次利用(梯次利用):回収した電池の状態を検査した上で、スペックが低い別の用途へ二次利用することであり、主な利用先は通信基地局バックアップ電源、蓄電システム、低速車、街路灯等。再生利用:破砕・分選・精製・冶金等により、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミ等の有価金属を回収すること。
出所:エム・アール・アイリサーチアソシエイツ作成
④金属資源
金属資源は、廃車解体における最大の回収対象であり、現時点では回収解体企業の主要な収益源です。特に鉄スクラップは、中国の再生資源市場全体でも最大の品目であり、鉄鋼業の低炭素化に向けた重要な原料です。2023年の中国全体の鉄スクラップ回収量は約2億3,800万トンでした。これに対し、廃車由来スクラップは約1,200万トン、約5%とする試算があります。22
表4 中国の再生資源における主要品目(2022年・2023年)
*本表の使用済自動車(機動車)は、自動車に加えて二輪車も含む。
出所:エム・アール・アイリサーチアソシエイツ作成
廃車由来のスクラップは、複数の鋼種や部品が混在し、配線等から銅が混入しやすいため、現状は建材・一般鋼材向けの利用が中心であり、自動車用鋼材への循環は限定的です。高度選別を行う企業事例は確認できますが、廃車由来の鉄スクラップを元と同等の自動車用鋼材へ戻すことが市場全体の標準となっているわけではありません。
アルミニウムでは、NIO社がEVの製造から電池・材料回収までを含む循環型サプライチェーンの構築を進めています。2023年には、自社の実験車から回収したアルミ部品を精密解体・分類し、溶解・成分調整を経て、アルミホイールやモーターケース等の自動車部品へ再利用する約200台規模の「Car-to-Car」実証を行いました。この実証は、廃車由来アルミを再び自動車用途へ戻す取組ですが、確認できる用途は主として鋳造部品であり、廃車由来の展伸材を同等の板材へ戻す循環とは区別する必要があります。これとは別に、NIO社は車体用アルミ板のプレス加工時に発生する製造端材を板材用溶解炉へ戻し、新たなアルミ板材の原料とする別の実証も行っており、再生アルミ利用を想定した材料設計も進めています。23
⑤プラスチック・タイヤ
廃プラスチックと廃タイヤも中国の主要な再生資源です。2023年の自動車由来廃プラスチックの回収量は115万トンで、中国の廃プラスチック回収量全体約1,900万トンの約6%を占めます。ただし、この数値は廃車由来に限定した統計ではありません。大型プラスチック部品であるバンパーやダッシュボード等は、解体技術規範に基づき、破砕前に取り外して分別回収することが求められます。一方、車体破砕後の残さに混入した複数種類のプラスチックを分離し、安定した品質の再生材に戻す仕組みは限定的です。再資源化の実態は、解体企業又は材料リサイクル事業者の設備能力と採算性に左右されます。先進事例として、天津新能グループは、廃車解体で発生したプラスチックを加工し、木材とプラスチックを組み合わせた複合材製品を製造して、建設・インフラ分野で再利用しています。自動車用途へ戻す水平循環ではありませんが、廃車由来プラスチックを製品原料へ転換する事例に位置付けられます。24
廃タイヤについては、循環経済・資源利用の観点から国家レベルで重点的に規範化が進められている分野であり、2020年に工業情報化部が「廃タイヤ総合利用産業規範」を公表し、更生タイヤ、再生ゴム、ゴム粉、熱分解等の利用経路を示しました。この資料では、使用中の交換によって発生するタイヤも含まれるため、廃車由来分の全国発生量までは確認できません。25
6. まとめ・示唆
中国の廃車リサイクル産業は、買い替え促進策や制度整備を背景に、認定回収解体企業を中心とした正規回収量が急速に拡大している点が特徴です。一方で、非正規ルートも依然として存在しており、正規処理への誘導は引き続き重要な課題となっています。
産業構造を見ると、地域の回収解体企業が車両の受入れや前処理を担う分散型の回収網と、GEMのような大手企業が破砕・高度選別・材料再生を担う統合型の資源循環拠点が併存しています。中国では、地域ごとの回収基盤を維持しながら、下流工程を広域的に集約する形で効率化が進められています。
また、資源循環の高度化に向けては、動力電池、非鉄金属、アルミニウム、プラスチック等を対象とした取組が進みつつあります。中国の廃車リサイクルは、正規回収率の向上を基盤としながら、地域分散型の回収網と大規模な選別・再生拠点を組み合わせることで、回収資源の高付加価値利用を目指している点に特徴がみられました。
- 1 本コラムでは、廃車とELVの両方を用いる。廃車は自動車として使用されなくなった車両、ELVは使用を終えて解体・リサイクル・処分の対象となった車両とする。国により、廃車やELVの定義や用い方は異なる点に留意が必要である。
- 2 商務部「2024年消费品以旧换新取得哪些成效?商务部回应」、商務部「盛秋平副部长出席国新办发布会介绍推进绿色消费有关情况」、新華社/央视网「2024年消费品以旧换新成效如何?商务部回应来了」(閲覧日:2026年7月24日)。
- 3 商务部「盛秋平副部长出席国新办发布会介绍推进绿色消费有关情况」https://interview.mofcom.gov.cn/detail/202601/ff8080819b917dc4019b962470b202ab.html(閲覧日:2026年7月24日)
- 4 新華社/央视网「2024年消费品以旧换新成效如何?商务部回应来了」https://news.cctv.cn/2025/01/08/ARTISSISwU4X8vAF1a8n0yiX250108.shtml(閲覧日:2026年7月24日)
- 5 公安部「全国机动车保有量达4.69亿辆 驾驶人达5.59亿名」https://www.mps.gov.cn/n2254314/n6409334/c10383533/content.html(閲覧日:2026年7月24日)
- 6 日本貿易振興機構「拡大が見込まれる車載電池リサイクル市場、中国企業が相次いで参入」https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2024/1201/f38661e3f949e200.html(閲覧日:2026年7月24日)
- 7 国务院令第715号「报废机动车回收管理办法」https://www.gov.cn/gongbao/content/2019/content_5392294.htm(閲覧日:2026年7月24日)
- 8 GB 22128-2019「报废机动车回收拆解企业技术规范」及びHJ 348-2022「报废机动车拆解污染控制技术规范」http://www.scsvrd.com/news.php?act=show&id=250(閲覧日:2026年7月24日)
- 9 人民網「报废车黑市猖獗 正规企业生存难(2018年11月)」http://industry.people.com.cn/n1/2018/1127/c413883-30423927.html(閲覧日:2026年7月24日)
- 10 商务部等7部门「关于开展报废机动车非法回收拆解专项整治行动的通知(2026年6月18日)」https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2026/art_58f3c70ea4bd4ca3a450ba2ca4049efa.html(閲覧日:2026年7月24日)
- 11 国务院令第715号「报废机动车回收管理办法」https://www.gov.cn/gongbao/content/2019/content_5392294.htm(閲覧日:2026年7月24日)
- 12 湖北省科学技术厅「荆门市动力储能电池产业技术创新联盟成立」https://kjt.hubei.gov.cn/kjdt/sxkj/jm/202303/t20230303_4569112.shtml(閲覧日:2026年7月24日)
- 13 格林美股份有限公司「動力鋰電池循環利用業務」https://www.gem.com.cn/UsedBatteryRecycling/index.html(閲覧日:2026年7月24日)
- 14 Roland Berger・平安银行・中国汽车流通协会、「2021中国二手车金融和生态报告」https://promote.caixin.com/upload/payhcstbg021.pdf(閲覧日:2026年7月24日)
- 15 「机动车强制报废标准规定」及び国務院令第715号「报废机动车回收管理办法」https://www.gov.cn/gongbao/content/2019/content_5392294.htm(閲覧日:2026年7月24日)
- 16 格林美股份有限公司(GEM)「報废汽车回收业务」https://www.gem.com.cn/ScrapVehicleRecycling/index.html (閲覧日:2026年7月24日)
- 17 第一财经「去年超50万辆事故车被拍卖(2025年11月)」https://www.yicai.com/news/102893996.html(閲覧日:2026年7月24日)
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- 20 工业和信息化部「新能源汽车废旧动力电池综合利用行业规范条件(2024年)」(2024年12月)https://www.baiyinqu.gov.cn/XZJDBMDW/bmdw/byqgyhxxhj/fdzdgknr/zcjd/art/2025/art_beee7a9f49904435958bc8f8e4e785f5.html(閲覧日:2026年7月24日)
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- 23 蔚来汽車(NIO)「NIO Releases 2023 ESG Report」https://www.nio.com/news/nio-esg-2023(閲覧日:2026年7月24日)
- 24 天津新能再生资源有限公司「走进新能」https://www.sinonechina.com/turnInto.html(閲覧日:2026年7月24日)
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